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熊本地震と豪雨を乗り越えて、
食卓に明るさを届けるカラフルな野菜

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熊本地震と豪雨を乗り越えて、<br>食卓に明るさを届けるカラフルな野菜の写真

東日本大震災をはじめ日本中で多発している台風・豪雨・地震などの自然災害や、新型コロナウイルス感染症の流行などは、大きな社会変化を及ぼすと同時に、私たちの生活そのものや価値観にも大きな影響を与えてきました。

「知って、買って、応援 ~ものがたりが、ここにある~」企画では、さまざまな変化に屈することなく前を向き、よいものをつくり続ける。
そんな、現場の声をお届けすると共に、実際に作られた商品を紹介していきます。

社会変化を受け入れながら、変化する生活様式により合う形を追求した生産者のこだわり商品は、きっと、あなたの生活にぴったりと寄り添い、豊かさを一緒に育んでくれることでしょう。

◇ ◇ ◇

熊本県内だけでなく、全国にファンを持つ『うさぎ農園』は、水と緑が豊かな熊本県合志市にあります。育てるのは化学農薬・化学肥料未使用のカラフルな西洋野菜。その華やかなビジュアルと確かな品質から、熊本県内の飲食店からの支持も厚く、今では全国から注文があるほどです。

うさぎ農園はスーパーや百貨店に野菜を卸しているわけではなく、県内の飲食店とネットショップ、イベント時の販売のみというスタイルにもかかわらず、Instagramのフォロワーは1万2,000人という、いわゆる“農家らしくない農家”でもあります。

2020年7月豪雨から三週間後の被災地。筆者が人吉・球磨にボランティアに行った際に撮影したもの

2020年7月豪雨から三週間後の被災地。筆者が人吉・球磨にボランティアに行った際に撮影したもの

しかし、ここ数年、熊本には地震と豪雨という大きな自然災害が二度も起こってしまいました。2020年の7月に起こった豪雨では、県南の人吉・球磨地区は壊滅的な被害を受け、県北のうさぎ農園も夏に収穫する予定の野菜が根腐れし、全滅してしまったそうです。

自身も被害を受けたにもかかわらず、より被害の大きかった地域への支援金集めに奮闘し、現在まで250万円の寄付を行っています。いち農家がどうしてそこまでやれるのか。うさぎ農園の思いを伺いました。

夫婦で始めた誰もが笑顔になれるカラフルな野菜づくり

元牧場ということで馬も育てているうさぎ農園の月野陽さん、亜衣さん

元牧場ということで馬も育てているうさぎ農園の月野陽さん、亜衣さん

田んぼと緑が広がる熊本県合志市野々島地区。昔から代々続く農家に囲まれながら、農業未経験の月野夫妻は2012年4月にうさぎ農園をスタートさせました。

ここで育てているのはカラフルな西洋野菜。色鮮やかな人参、ビーツ、カラー大根、西洋のキャベツなど、無農薬・無化学肥料で年間200種類ほどを栽培しています。

「実は西洋野菜を栽培するには適していない場所なんです。イタリアはカラッとしていて湿気のない土地だけど、日本は湿気だらけで寒暖差が激しい。日本に適した栽培方法を調べたけど、当時は栽培をしている人も栽培方法が載った本もなくって。唯一救われたのは水ですね。熊本の水は“蛇口をひねればミネラルウオーター”と言われるほど、本当においしい地下水なんです。あとは周りにベテラン農家さんが多かったので、経験の少ない私たちはいろいろと助けてもらいました」

そう語るのは月野亜衣さん。うさぎ農園では夫の陽さんが栽培の研究を担当し、亜衣さんが販売・開発・PR・営業を担当する分担制をとっています。

西洋野菜の特徴の一つに、そのカラフルさがある(月野さん写真提供)

西洋野菜の特徴の一つに、そのカラフルさがある(月野さん写真提供)

「実は西洋野菜を栽培するには適していない場所なんです。イタリアはカラッとしていて湿気のない土地だけど、日本は湿気だらけで寒暖差が激しい。日本に適した栽培方法を調べたけど、当時は栽培をしている人も栽培方法が載った本もなくって。唯一救われたのは水ですね。熊本の水は“蛇口をひねればミネラルウオーター”と言われるほど、本当においしい地下水なんです。あとは周りにベテラン農家さんが多かったので、経験の少ない私たちはいろいろと助けてもらいました」

そう語るのは月野亜衣さん。うさぎ農園では夫の陽さんが栽培の研究を担当し、亜衣さんが販売・開発・PR・営業を担当する分担制をとっています。

収穫したばかりの西洋ニンジン(月野さん写真提供)

収穫したばかりの西洋ニンジン(月野さん写真提供)

「もともと、ここでは主人のお父さんとおじいちゃんが馬の牧場をしていました。当時、私は石川県で高校教師を、主人は航空自衛官をしていたのですが、休暇で帰省した際に、20年前に廃業して荒れ果てた牧場跡地を見た主人が言ったんです。『ここは昔、楽しい場所だったのに』と」

悲しむ陽さんの姿を見て「ここを昔のように楽しい場所に戻したい」と思った亜衣さん。

「とはいえ私たちは牧場経営や農業の経験者ではないので、土地を活用してできることの模索から始めました。その結果、昔からひそかに飲食店をするのに憧れていた私の意見をくんでもらい、『飲食店で使うための野菜作りから始めて、いずれはお店もできればいいね』と、農家人生が始まったんです」

2011年3月に熊本に帰ってきた月野夫妻。亜衣さんは熊本特別支援学校で教師として働き、陽さんは牧場跡地を家や加工場にするべく、セルフリノベーションをしながら農業大学校で基礎から勉強をしました。

バジルを収穫する二人

バジルを収穫する二人

家族が残した土地をよみがえらせたい一心で取り組んだ農家の道。ただでさえ未経験な二人が、なぜ日本での栽培が困難な西洋野菜を育てる事になったのでしょう?

「石川県で教師をしていたうちの数年間は、特別支援学校に勤めていたんですよ。その時に脳性麻痺(まひ)の子や、言葉が話せない子を担当していました。そういう子たちって目があまり見えなくても、ハッキリした色や匂いは感じられるし、おいしいかおいしくないかは分かるんですよね。そういう子どもたちの目にも入りやすい、華やかな食材を作って食べてもらいたい。この思いがきっかけで、カラフルな西洋野菜にたどり着きました」

そんな思いで野菜づくりを始めてみたものの、知識も経験も乏しい二人にとって、西洋野菜を育てるのは至難の業。きれいな形に育てるには時間がかかるため、すぐに生計を立てるのは難しいと判断した二人は、はじめから加工品作りを想定した加工場を建てることに。

さらに、栽培が難しくリスクのある西洋野菜を扱うことから“少量多品目”栽培に決めて、うさぎ農園をスタートさせました。

加工品作り

「たくさんの種類を少量ずつ作るやり方で、常に年間200品種の野菜を作っています。特定の品種を一定の場所に卸す事はなく、ほとんどの野菜をセット売りしているんですよね。はじめから失敗を想定に入れて、同じニンジンでも10種類ほどを育てています。もしキャベツが全滅したとしても他の野菜でセットが組めるように、リスクの分散をしています。気候や虫、水分量に左右されやすい西洋野菜をこの土地で作る以上、“絶対採れる”という確証はないですからね」

また、扱いが難しい西洋野菜の農法には、こんなこだわりが。

「農家を始める際に、無農薬&無化学肥料というのは決めていました。作った野菜を直接販売したいという気持ちがあったので、情報として伝えやすいという事と、子どもたちに安心して食べてもらいたいという思いがあったからです。そのため、土地にある草や落ち葉を土にしたり、お米のもみ殻で炭を作ってそれらを畑に入れたり、竹林の菌を使って肥料を作ったりと、なるべく地場で出来る事を実行しました。主人が農学校で習ってきた事や本を読んで良さそうな方法を片っ端からチャレンジして、良かったら続けて、ダメだったらやめて。その繰り返しです」

どうしてもできない事はあるけれど、やれる事はできるだけやろうと心がけているそう。

熊本地震と豪雨、2度の自然災害で知った「人の力」

今回の豪雨により、くま川鉄道で計4本の橋が流失したそう

今回の豪雨により、くま川鉄道で計4本の橋が流失したそう

2016年に起きた熊本地震では、農作物に特別な被害はなかったものの、物流が完全にストップ。それまで安定していた県外への流通は2カ月ほど止まり、イベント出店もできないため丹精込めて作った春野菜は廃棄する事になりました。被害額は200万円ほどでした。

「私たちは少ない被害で済んだものの、被害が大きい益城や阿蘇、熊本市内の状況を見てかなりショックを受けましたね。2カ月ほどたって物流が再開した時に、うちから出せる野菜はなかったけれど、県外の方を中心に加工品の支援をしてもらった事はとても助かりました」

熊本地震から4年たち、まだ復興途上ではあるものの元の活気を取り戻した熊本を、新たな災害が襲ったのは2020年の7月に起こった“令和2年7月豪雨”です。報道などでは県南の被害が大きく取り上げられていましたが、長く続く大雨は農家にとって悪夢のようだったと亜衣さんは話します。

「あの時どれほど雨が降り続いたでしょうね。夏野菜はすべて根腐れを起こし、全滅してしまいました。新型コロナウイルスの影響で、卸し先の飲食店はストップ、出店予定だったイベントも春からすべて中止。どこまで不運は続くんだろうとひどく落ち込みました。結局400万円ほどの損失がありましたが、いつまでも落ち込んではいられないので、秋の野菜を早く作れるようにと気持ちを切り替えました」

そんな中、Instagram上にアップされる豪雨災害の情報をシェアしていた亜衣さんの元に、意外なメッセージが届きます。

「豪雨災害の被害状況を知った県内外のフォロワーさんから、『うさぎ農園を通して何か支援ができないか』というメッセージが一日に50通ほど届いたんです。私たちも畑がダメになって作業がストップしていたので、今なら何かできるんじゃないかと思いました」

ちょうどその頃、オリジナルのエコバッグと保冷バッグを作っていた事もあり、これらの売り上げの一部を寄付することを考えた亜衣さん。しかし、実行するにあたって本当にできるのか不安になった亜衣さんはInstagramのライブ配信を通してフォロワーとミーティングを開催しました。

「考えている事とグッズの原価を伝えて、みんながいくらだったら買いやすいのか、寄付先はどこにしようかと、配信しながらフォロワーのみなさんに相談したんです。リアルタイムで500人が参加してくれて、アーカイブ動画は8,000人もの人が見てくれていました」

配信の翌日にはネットショップで販売を始め、5日間の注文は1,200件、支援額は230万円集まりました。そこに、月野さん夫婦の支援額20万円を足して250万円を寄付することに。200万円を球磨村役場に、50万円を“熊本復興支援プロジェクト”に託しました。

オリジナルのエコバッグと保冷バッグ(月野さん写真提供)

オリジナルのエコバッグと保冷バッグ(月野さん写真提供)

さらに、月野夫妻は被害が大きい被災地である人吉・球磨地方にも何度か足を運び、実際にボランティア活動で汗を流しました。

「みなさんの気持ちとお金が集まり『被災地の現状も伝えなければ』という使命感が芽生え、被災地で実際にボランティアをさせてもらいました。どこにお金が必要で誰が困っているかをこの目でしっかり見て確認したかったんですよね。水害から一週間後の球磨村を見た時は、あまりの光景に言葉を失いました。何も残すものがないほど泥だけの町は、同じ熊本とは思えず、私なんて被災者とはいえない。自分たちの野菜もダメになったけど、こんなのたいした事はない! と、そう強く思いました」

亜衣さんが話すように被害が大きい地区では、濁流に飲み込まれ、骨組みだけ残った家屋がいまだに建ち並んでいます。また、新型コロナウイルスの影響で県外ボランティアが一切入る事ができないため、熊本地震の時のようにスピード感のある復旧が望めないのも現状です。

「同じ体験をしていないから、被災者の方々と同じ気持ちにはなる事はできませんが、寄り添うことはできます。夫の口癖である『みんなが良くならないかん』という言葉に、今はすごくうなずけるんです。課題はまだ山積みだし、復興の道のりはかなり長期的になるでしょう。だけどこれからも支援は続けていきたいし、ボランティアに出向いて、発信も続けていきます」

亜衣さんにとって、豪雨災害での一連の出来事は人生にとても大きな影響を与えることになりました。自然災害の脅威を肌身で感じたのはもちろん、人の優しさが集まると大きな力になる事がわかったと話します。さらに、常に見守って応援してくれる県内外のフォロワーを「チームうさぎ」と名付け、強い味方を手に入れたと笑顔で話してくれました。

食卓を明るくすること、忙しい人の応援をすること

パセリ収穫の様子(月野さん写真提供)

パセリ収穫の様子(月野さん写真提供)

月野夫妻が農業を始める時に決めたことは二つ。一つは「食卓を明るくする」こと、もう一つはうさぎ農園が作る加工品で「忙しい人の応援をする」ことです。

「ナス嫌いな子が、たてしまが入った変わったナスを見て自ら食べたとか、ニンジン嫌いな子が黄色のニンジンを見てニンジンに興味も持ったなど、SNSでお母さんたちが報告してくれるんですよ。初めは障がいを持った子どもたちに喜んでもらいたい一心でしたが、健常者でも私が望む同じ世界で楽しんでくれているのが嬉しくて。私たちの作った野菜で誰かの食卓がちょっとでも明るくなっているのが感じられる時が、農業をやっていて良かったと思える瞬間です」

左からビーツドレッシング、玉葱ドレッシング、生姜焼きのタレ。どれも人気商品

左からビーツドレッシング、玉葱ドレッシング、生姜焼きのタレ。どれも人気商品

「家事を頑張る人たちがちょっとでも楽できるような仕組み作りも、うさぎ農園の使命だと思っています。何段階もある家事の手間をうさぎ農園がお手伝いし、すこしでも負担が軽くなれば、料理づくりも、その料理を食べる子どもたちとの食卓も明るくなる。そうした相乗効果で、食を通じて家庭を明るくしていきたいんです」

そう話す加工品は常に10種類ほどのラインアップがあり、ピンクのビーツドレッシングやバジルペースト、生姜(しょうが)焼きのタレなど、どれも根強いファンがいる商品です。

亜衣さんの昔からの夢である、農家をしながら飲食店をやるという目標について「ほぼ夢はかなっている」と話す亜衣さん。

亜衣さん

「マルシェで野菜たっぷりのパニーニを販売している時はカフェをやっている気分になれるし、ジュースのラベルをイラストレーターと一緒に作っている時はデザイナーのような気分になれます。教師を引退し、農家になっても講演会に出て教えることは続けていけるし、やりたかった事が全て農業を通して経験する事ができているんです。農業って素晴らしいと思いませんか?」

知識も経験もゼロの状態から始めた農業という世界で、自然の恵みと恐ろしさにじっくり向き合い、カラフルな野菜を作り続けるうさぎ農園の姿を見ると、なんだか勇気が湧いてきます。


取材・写真:大塚 淑子

うさぎ農園の商品はこちら

うさぎ農園特製・にんにくのラー油漬(にん辛)

にんにくをたっぷり使ったラー油漬けは、うさぎ農園内にある加工場で一つずつ手作りされたもの。乾燥シイタケをふんだんに使用した、香り豊かな万能調味料です!
うさぎ農園特製・食べる生姜

甘辛さがクセになる生姜(しょうが)のつくだ煮。しょうゆやみりんを足せば、生姜焼きのタレに大変身! そのままごはんのお供や、お肉にのせてソース代わりにもぴったりです。

編集

株式会社 Huuuu(外部サイト)

Huuuuはローカル、インターネット、カルチャーに強い会社です。ライター・編集者を中心に、全国のクリエイター、生産者、職人、地方行政と関係を築いています。わかりやすい言葉や価値観に依存せず「わからない=好奇心」を大切に、コンテンツ制作から場づくりまで、総合的な編集力を武器に全国47都道府県を行脚中。


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