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三陸の牡蠣を世界へ
石巻の水産ベンチャーが挑む世界のマーケット

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三陸の牡蠣を世界へ<br>石巻の水産ベンチャーが挑む世界のマーケットの写真

東日本大震災をはじめ日本中で多発している台風、豪雨、地震などの自然災害や、新型コロナウイルス感染症の流行などは、大きな社会変化を及ぼすと同時に、私たちの生活そのものや価値観にも大きな影響を与えてきました。

「知って、買って、応援 ~ものがたりが、ここにある~」企画では、さまざまな変化に屈することなく前を向き、よいものをつくり続ける。 そんな、現場の声をお届けすると共に、実際に作られた商品を紹介していきます。

社会変化を受け入れながら、変化する生活様式により合う形を追求した生産者のこだわり商品は、きっと、あなたの生活にぴったりと寄り添い、豊かさを一緒に育んでくれることでしょう。

◇ ◇ ◇

日本有数の牡蠣の生産量を誇る、宮城県石巻市。石巻市出身の高田慎司さんは、2008年に水産加工業のベンチャー企業・株式会社ヤマナカを立ち上げました。恵み豊かな三陸の海で養殖された、ホヤや牡蠣、帆立の加工・販売、貿易を行なっています。

「宮城県産の牡蠣は非常に品質が高いのに、PRが足りていない」と考えた高田さんは、牡蠣を「Miyagi Oyster」とブランド化して世界に発信するプロジェクトを発足。現在では東南アジアを中心に、中東やロシアなどにマーケットを広げることに成功しています。しかし、ここに至るまでには多くの困難があったのです。

もともと、外資系保険会社に勤めてた高田さん。2006年、金融ビッグバンで混迷する保険業界に見切りをつけ転職を決意します。「生まれ故郷の石巻市の海産物の素晴らしさを広められるような仕事がしたい」という思いから、海産物を販売する仕事を始めました。

「最初に始めたのはホヤの販売でした。まずは漁師さんとの信頼関係を築くため『買わせてください』と一軒一軒お願いして回りました。妻と2人、軽トラック1台で販売するところからスタートしました」

南相馬市小高区

ホヤの販売を1年間続けた後、2008年にヤマナカを設立。殻付きの牡蠣や、帆立の販売も開始しました。順調に売上げを伸ばしていた矢先、2011年に東日本大震災が発生します。自社工場は浸水し半壊、沿岸の養殖施設はほとんどが流失し壊滅的な状態に。

多くの水産加工会社や養殖業者が廃業を考える中、高田さんは被災後1カ月で会社を再開させます。現在では震災前を上回る年商を記録し、海外へのマーケット拡大にも成功しています。

高田さんが養殖漁業を「絶対に途絶えさせてはいけない」と考える理由や、生産者の実情、三陸の海で育まれた牡蠣の魅力を伺いました。

今回ご紹介する現場

株式会社ヤマナカ

潮流と地形に恵まれた三陸の海岸で育った海産物の加工・流通を手がける水産ベンチャー企業。MARINE×INNOVATIONを掲げ、国内のみならず海外に向けてもサスティナブルな流通の仕組みを作るべく取り組んでいます。

ヤマナカの海産物

三陸沖はおいしい牡蠣を育てる天然の生簀

宮城県産の牡蠣は、プリプリとして肉厚で、濃厚な旨味が凝縮されています。なぜ三陸の海ではおいしい牡蠣が育つのでしょうか。その秘密は、三陸の海岸の地形にあると高田さんはいいます。

高田さん

「牡蠣やホヤは植物性プランクトンを栄養源にしています。三陸沖は黒潮と親潮の交差点になっているため、潮流で運ばれた栄養が三陸の海を恵み豊かな環境にしているんです。

また、リアス式海岸という入り江の多い複雑な地形になっているため、プランクトンが増えやすい。森が海に突き出るような地形になっているおかげで、山で育まれた豊富なミネラルが海に流れ込み、プランクトンが爆発的に発生するのです。魚介類にとっては、まさにパラダイスのような天然の生け簀なのです」

殻付きで出荷するためには、海の中で成長を待つ間も飼育環境を整えてあげなくてはいけません。漁師さんたちは日頃から養殖施設を整備しながら、丹精込めて手入れをしています。三陸の海の豊かさと生産者の苦労があるからこそ、品質の高い牡蠣が育まれるのです。

その一方で、日本の漁業の漁獲量は年々減少しています。もっとも漁獲量の多かった1984年をピークに、現在ではその半分ほどの漁獲量に。そんな中でも、漁獲量が減っていないのが牡蠣やホヤなどの養殖漁業です。養殖漁業は、なぜ漁獲量を持続的に保つことができているのでしょうか。

「牡蠣などの養殖は、種苗を育てることから始めるのですが、天然採苗といって、地場の海で種牡蠣を採取することが可能なのです。そして、天然のプランクトンを食べて成長するため、人工的に餌を与える必要がありません。自然の力で、おいしい牡蠣や帆立を養殖することができるのです」

牡蠣や帆立の殻

「養殖水産物は、生産者一人当たりどれくらいの量が生産され、収穫されるのか予測を立てることができます。資源や環境に配慮した養殖漁業は、サスティナブルという観点から、絶対に衰退させてはいけないのです」

しかし、養殖漁業の担い手は年々減っているといいます。

「漁師さんは、牡蠣を剥き身にする加工処理をしてくれる『剥き子』と呼ばれる職人さんを雇用しています。そのため剥き子さんが処理できる分量しか、牡蠣を作ることができません。その担い手が、高齢化や震災による避難転居などで減少しており、生産者数は震災前の1141人から、現在では406人ほどまでに減っています。それらの影響もあり、宮城県の牡蠣生産量は震災前の3分の1程度になってしまっているのです」

東日本大震災後に待っていたのは、“放射性物質の検査”のハードル

町の様子

東日本大震災の津波は、三陸の養殖設備も容赦なく襲います。高田さんも石巻市で被災し、文字通りゼロからのスタートとなりました。

「私の親族や会社の人間、知り合いの生産者に亡くなった方はいませんでしたが、避難する際に目の前で小学生くらいのお子さんの乗った車が、津波で押し流されるのを目の当たりにしました。その光景を一生忘れることはできません」

ヤマナカの自社工場は床上1m50cmまで浸水、設備なども流されてしまいました。

「養殖漁業の生産現場も壊滅的な被害を受け『もう養殖はやめる』と仰る方も少なくありませんでした。でも私には、絶対に養殖漁業を途絶えさせてはいけないという思いがありました」

高田さんは震災から1カ月後に会社を再稼働。社員と共に被災した工場の片付けを始めると、「ヤマナカが動いている」という噂が漁師さんたちに届き、そのことが養殖を再開する後押しになったといいます。

牡蠣や帆立を出荷できる状態まで成長させるには、1年ほどかかります。2012年には再度販売ができるようになりましたが、そこには放射性物質の検査というハードルがありました。

高田さん

「一度の検体に約3万円の費用が掛かるため、宮城県漁業に相談して負担してもらえるようお願いしました。

手続きは大変でしたが、販売が始まると思っていたよりもスムーズに流通が動き始めました。日本全国で『被災地を応援しよう』という機運が高まったおかげですね。国内では風評被害よりも応援の気持ちのほうが強いんだと感じることができました」

しかし、海外からは厳しい目が向けられました。

「産地を伝えただけで敬遠されたり、商品のパッケージに“RADIATION FREE”を入れるように指示されたりと、輸出に関しては厳しい目が向けられていましたね。未だに韓国と中国からは規制をかけられているため、宮城県産の農水産物は輸出できていません。他の国は徐々に規制が緩和されていき、2019年にようやく放射性物質の検査を求められなくなりました」

三陸の牡蠣を世界へ! 漁師も巻き込んだ海外マーケット開拓

養殖漁業の復興のためにもマーケットを広げ、生産者に利益を還元したいと考えた高田さん。しかし国内市場は縮小傾向にあります。そこで目を向けたのが海外です。

「日本国内の牡蠣の需要は秋から冬がメインなのに対し、海外市場では1年中牡蠣の需要があるんです。しかも日本と違って殻付きの牡蠣が好まれるため剥き身にする必要がなく、生産者の手間やコストを省くことができます」

看板

高田さんは、2015年頃から海外への輸出の準備を開始しました。

「はじめは殻付牡蠣の輸出について商社さんに相談しましたが、取り合ってもらえなかったですね。それでも実際に宮城県産の牡蠣のクオリティーを知ってもらえれば道は開けると思っていたので、現地での見本市や商談会などに参加しました」

高田さんは現地のSNSへの投稿や飲食店向けの試食会を開き、カキフライなどの日本の料理法を教えるなど、地道なPR活動を続けました。

「ベトナムでの試食会には漁師さんたちにも参加してもらったんです。目の前で現地の方に牡蠣を食べてもらう体験は、漁師さんにとっていい刺激になったようで。『もっといい牡蠣を作ろう!』と話をされていましたね」

海外では「安心・安全なメイドインジャパン」ということが興味を持ってもらいやすく、2013年に和食がユネスコの世界無形遺産に登録されたことも追い風になりました。

「それまで海外では北海道の海産物の知名度が高かったのですが、今では東北の海産物のおいしさも知っていただけるようになりました」

賞状

サステナブルな水産物を取り扱うための、ASCーCoC認証やMSCーCoC認証も取得している

輸出をスムーズにするため、高田さんは衛生面・品質管理に優れた自社工場を設立し、2018年には米国FDA HACCP認証(食品衛生管理に関する認証)を取得しました。現在では国内市場と海外市場で、年商12億円(平成27年度決算)を売り上げています。

東北の海と山の恵みを凝縮した「オイスターパテ」

高田さん

震災後、三陸の海産物のおいしさを広めることに成功してきた高田さんですが、2020年はコロナ禍の煽りを受けたと言います。

「輸出は相変わらず活況なのですが、国内の需要の落ち込みが激しく、前年の4分の1ほどになりました。これまで私たちは飲食店向けのBtoBがメインの事業でしたが、コロナ禍の経験から一般消費者に向けた商品を開発と、新たな市場の開拓をすることになり、オイスターパテが誕生しました。

せっかく作るなら東北の食材を使いたいと思い、元々知り合いだった仙台の秋保ワイナリーさんとのコラボレーションが実現し、さらに県内にある蔵王酪農センターさんからバターを提供していただくなど、東北の食材が揃ったのです」

「秋保ワイナリー」の白ワインと、「蔵王酪農センター」のバター、ヤマナカの牡蠣をブレンドした「オイスターパテ」は、東北の海と山の恵みの旨味が凝縮され、コクのあるおいしさを楽しむことができます。

昨年6月から開発を始め、12月には発売開始したオイスターパテ。驚くべきスピード感ですが、その原動力は「三陸の養殖漁業に明るい話題を提供したい」という思いだといいます。

オイスターパテ

「漁師さんたちは、多くの経費を負担しながら生産されています。しかし一次産品はマーケットでは買い叩かれてしまう傾向が強いため、暮らしは苦しくなるばかりです。彼らが潤っていかなければ、養殖漁業は衰退していくことになりますし、次世代の担い手も集まりません。その実情をもっと多くの方に知ってもらいたいのです」

「一般の方に、養殖漁業の現場を見て知ってもらいたい」と考えた高田さんは、牡蠣の養殖設備を見学できるツアーを立ち上げました。

「日本三景に数えられる松島湾で、現在、日本では珍しい干潟を利用した牡蠣養殖を行っています。通常、牡蠣養殖は水深のある漁場で行われていることから、牡蠣の養殖現場を見学するには、漁船に乗って沖合に出なければ見ることができません。そのため、産地に暮らす私たちでさえ水揚げ風景などは見たことがない方が大半です。

一方で、干潟を利用した牡蠣養殖は陸側から長靴を履いて歩いていける施設となるため、容易に牡蠣の収穫体験などができるようになります。また海岸線に養殖施設が設置されることで、見応えのある風景が生まれることから、商業施設などの併設も視野に入れています。コロナの流行がおさまったら、家族旅行などぜひ多くの方に体験してもらいたいですね」

海岸の夕陽

「こうした観光事業を含め、多角的なアイデアを持って養殖漁業を確固たるものにしていきたい」と語ってくれた高田さん。今日も東北の地で、漁業の未来に思いを馳せます。


取材・文:都田ミツ子
撮影:古里裕美(外部リンク)

株式会社ヤマナカの商品はこちら

ヤマナカの海産物
栄養豊富な三陸海岸で育った牡蠣や帆立、ホヤのおいしさをご自宅で楽しめるセットや加工品がいつでもご自宅で楽しめます。なかでも宮城県産の材料にこだわり、牡蠣のうまみをギュッと閉じ込めた「オイスターパテ」は家飲みのお供にぴったり。「海のエコラベル」と呼ばれるMSC・ASC認証を取得した海産物を、食品衛生管理に関する国際認証を取得した工場で加工した、持続可能かつ安心・安全な商品の数々をぜひご自宅でご賞味ください。

編集

株式会社 Huuuu(外部サイト)

Huuuuはローカル、インターネット、カルチャーに強い会社です。ライター・編集者を中心に、全国のクリエイター、生産者、職人、地方行政と関係を築いています。わかりやすい言葉や価値観に依存せず「わからない=好奇心」を大切に、コンテンツ制作から場づくりまで、総合的な編集力を武器に全国47都道府県を行脚中。


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そうだ。こだわりは、ごちそうなんだと思う。
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