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海はないけど郷土食はサバ缶!?
特別な食文化を守る、
長野県飯山市のサバ缶プロジェクト

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海はないけど郷土食はサバ缶!?<br>特別な食文化を守る、<br>長野県飯山市のサバ缶プロジェクトの写真

長野県飯山市は日本屈指の豪雪地帯、ピーク時の積雪は2メートルを超えるほどです。そんな雪深い飯山市の「ソウルフード」として食べ続けられているのが「サバ缶」。「日本屈指のサバ缶を消費する街」として、全国ネットのテレビ番組など、メディアに多数取り上げられています。なぜ、海のない飯山市に「サバ缶」の食文化が根付いたのでしょうか。

◇ ◇ ◇

飯山市で「サバ缶」の食文化を広める活動をしている岸田哲也さんはこう話します。

飯山市をもっと盛り上げるべく創業したGOOD MOUNTAIN合同会社・代表の岸田さん

飯山市をもっと盛り上げるべく創業したGOOD MOUNTAIN合同会社・代表の岸田さん

「現在と違い、重機を使った除雪ができなかった時代は、豪雪地帯である飯山市は1~2ヶ月もの間、雪に閉ざされて買い物に出ることができませんでした。そのため、雪が降る前にサバ缶を箱買いして備蓄していたのです。サバ缶は冬の飯山市民の貴重な動物性タンパク源として欠かせない存在になっていきました」

北信濃の郷土料理には、「根曲がり竹」という小さなタケノコのような山菜と、サバの水煮缶を具材に味噌で仕上げた「タケノコ汁」があります。

「毎年6月頃に飯山市では皆がタケノコ汁を食べるので、その時期になるとスーパーマーケットにサバ缶が山積みになります。初夏の訪れを告げる根曲り竹と一緒に、冬に余ったサバ缶を食べ切ってしまおうという料理なんです」(岸田さん)

岸田さんは昨年「飯山フード Iiyama Food サバ缶プロジェクト」を立ち上げ、ホームページで「サバ缶」を使ったレシピを発信したり、「飯山限定コラボパッケージサバ缶」の販売などを行なってます。

同プロジェクトの代表者である岸田さん、プロジェクトメンバーの木原孝さん、モーガン・リチャードさん、木原翼さん、庚(かのえ)敏久さんに、「サバ缶」の魅力や、その食文化への思いについてお聞きしました。

今回ご紹介する現場

飯山フード Iiyama Food サバ缶プロジェクト

雪深い長野県・飯山市から地元の魅力を発信すべく集まった地元有志のチーム。飯山市のソウルフードともいえる「サバ缶」を軸にさまざまなプロジェクトを実行しています。

SABASKI 金華サバ水煮

プロジェクトメンバー(左から)モーガンさん、木原翼さん、木原孝さん、岸田さん、庚さん

プロジェクトメンバー(左から)モーガンさん、木原翼さん、木原孝さん、岸田さん、庚さん

「サバ缶」はもっとおいしく食べられる! 飯山市に伝わるレシピ

近年、その栄養価の高さに注目が集まり「サバ缶」ブームが続いています。サバ水煮缶の国内消費量は、2002年は 4,833 トンでしたが、ブームが起こったことで2016 年には 13,756 トン、2018 年には 23,343 トンと、増加しています。(「サバ缶における水煮と油漬の国内消費量の推移」日本水産缶詰輸出水産業組合・日本水産缶詰工業協同組合より)

2019年には一旦落ち着きを見せましたが、新型コロナウイルスの影響で再びヘルシーさや非常食としての利便性が注目され再度「サバ缶熱」が上昇しています。

そんなブームが起こる遥か昔から、長野県飯山市では「サバ缶」が郷土食として愛され続けてきました。

普段はカヌー・カヤックでのラフティングツアーなどのアウトドアアクティビティを運営している庚さん

普段はカヌー・カヤックでのラフティングツアーなどのアウトドアアクティビティを運営している庚さん

「この辺りでは、戦前までは野山で兎などを狩猟をして、自給自足でタンパク源を得ていました。しかし戦後の高度成長期で都会へ出稼ぎに行く人が多くなり、狩猟をする人が減っていったんです。それと同時に山深い飯山市にも、海のものが流通して入ってくるようになりました。それが海から遠く離れた飯山まで運搬しても、保存の効くサバ缶だったんです」(庚さん)

飯山市の各家庭には、必ずといっていいほど「サバ缶」が常備されており、カレーの具材は何か尋ねると「サバ缶」とほとんどの人が答えるほど身近な食材なのだそう。

「とくに今の70代、80代の方はサバ缶がなければ冬を越せなかった世代です。年配の方は地域の山や川の清掃に行く際にはポケットにサバ缶を入れておいて、休憩時に軽食として食べるのが当たり前の光景でした」(岸田さん)

初夏に食べられている北信濃の郷土料理「タケノコ汁」をはじめ、「大根とサバ缶の煮付け」や「サバ缶と里芋のコロッケ」など、サバ缶を使った家庭料理が数多く存在します。

そんな飯山市の「サバ缶」文化を守り、広く伝えていくために岸田さんがスタートさせたのが「飯山フード Iiyama Food サバ缶プロジェクト」です。

「全国的なサバ缶ブームの影響もあり、ここ数年飯山市のサバ缶文化が脚光を浴びるようになりました。しかし現在では除雪車のおかげで冬でも買い物に行けますし、昔とは比べものにならないほど食の選択肢が増えました。時代の移り変わりの中で、サバ缶の食文化が失われてしまうのではないかと危機感を抱いたんです。

僕ら世代が意識して食文化を守り、さらに広めることで飯山市を盛り上げていきたいと思っています」(岸田さん)

復興支援の絆から生まれた 「飯山限定コラボパッケージサバ缶」

岸田さんたちは、プロジェクトの第一弾として「サバ缶」を使った料理が食べられる居酒屋「飯山駅ナカ酒場 えっぺ」を2020年6月に出店。「玄関口である飯山駅の中から発信しよう」と、北陸新幹線の開通で国内外の観光客で一層にぎわうようになったJR飯山駅の駅ナカにお店を構えました。

店舗

「看板メニューは、『本気のサバカレーうどん』です。全国的にも有名な焼きカレーの名店『ペンティクトン』のオーナーシェフでもある、プロジェクトメンバーの木原孝さんに監修してもらいました。『サバ缶リエット』や『サバ缶オニオン』なども人気で、これからも新しいオリジナルのサバ缶メニューを開発し提供していきたいと考えています」(岸田さん)

さらに、プロジェクトの第2弾として生まれたのが「飯山限定コラボパッケージサバ缶」です。

宮城県石巻市の水産加工会社「木の屋石巻水産」のサバ水煮缶に、飯山市を代表するモチーフの「スキー」と「サバ」をイメージしたラベルデザインが施されています。「木の屋石巻水産」のサバ水煮缶は、秋から冬の間にだけ獲れる「金華さば」のみを使い、朝水揚げされたサバを当日の昼までに加工し、無添加無着色にこだわって製造されているもの。

「木の屋石巻水産」は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けました。その復興までの軌跡を取材した単行本「蘇るサバ缶 震災と希望と人情商店街(廣済堂出版)」が出版されたり、その缶詰のおいしさが全国ネットのテレビ番組で取り上げられたりと、全国的に注目を集めている水産加工会社です。

「木の屋石巻水産」の全面協力が得られた背景には、東日本大震災の復興支援活動からのつながりがありました。

岸田さん

「僕は2015年から毎年開催されている『飯山さんま祭り』の実行委員をやっていたんです。石巻市に隣接する女川町からサンマを仕入れて、『食べることで復興支援をしよう』という取り組みでした。そのサンマを卸してくれていた会社の社長さんから紹介していただいたのが『木の屋』さんでした。『サバ缶の消費量の多い飯山市のために協力しますよ』と快く仰ってくださったんです」(岸田さん)

今年3月に発売開始したところ、好調な売れ行きだといいます。

「ネット販売もしていますが、全体の8割は地元のコンビニや道の駅などの店頭販売なんです。お店の方が『サバ缶の町!飯山』とポップを手作りしてくださっているようで、観光客の方が『飯山市ってサバ缶が有名なんだ』と興味を持って買ってくださいます。

なにより地元の方が大量に購入してくださっているんです。やはりサバ缶が大好きなんですね(笑)。『地元のために若い人が頑張っているなら』と買ってくださる方も多いです」(岸田さん)

ヘルシーでサステナブルなサバ缶の魅力

サバ缶

サバ缶の魅力は、手軽さやおいしさだけでなく栄養価の高さにもあります。サバには、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といったオメガ3(n-3)系脂肪酸が含まれ、これらは血液の流れをサラサラにして生活習慣病を予防する効果が期待される成分です。

「木の屋石巻水産」のサバ水煮缶は、新鮮なサバを加工しているため、骨や血合も丸ごと旨味を損なうことなく食べることができます。缶詰は、栄養価の高いサバをもっとも効率よく食べる方法だといえるのです。

また、食物連鎖の下位に位置するサバを使うことは、水銀の生物濃縮の影響を受けにくいとも。

看板

「海外の人もサバ缶に注目する可能性は高い」と、プロジェクトメンバーのモーガンさんは言います。

「今はまだツナ缶に比べるとサバ缶の知名度は高くありません。しかし、ヘルシーなサバ缶は、欧米諸国の人たちの注目を集めるでしょう。また、飯山市におけるサバ缶の特別なストーリーはきっと海外の人の心にも届くはずです」(モーガンさん)

海のない飯山市の食文化は、サバという海産資源に支えられています。「そのことを当たり前と思わずに感謝しなければならない」と木原さんは考えます。

飯山市の人気カレー店「ペンティクトン」のオーナーであり、飯山駅ナカ酒場「えっぺ」のメニュー監修も務める木原さん

飯山市の人気カレー店「ペンティクトン」のオーナーであり、飯山駅ナカ酒場「えっぺ」のメニュー監修も務める木原さん

「私たちも普段はサステナブル・シーフードについて深く考える機会は多くありません。長野県は海なし県ですしね。しかし、地球環境に関心を持たなければ、いつかはサバも獲れなくなってしまうかもしれません。そうしたら飯山市の食文化も無くなってしまう。サステナブルな課題と私たちがつながっていることを、もっと意識しなければいけないと思っています」(木原さん)

おいしい「サバ缶」料理を食べに、飯山市へ

サバ缶ブームが続いているものの、まだまだおいしい食べ方が知られていないと岸田さんは感じていると言います。

「缶詰の蓋を開けた状態でそのまま調理するような今風のレシピも人気ですが、僕らのおじいさん、おばあさんの世代が食べてきたような昔ながらのレシピを掘り起こして伝えていくのも大事だと思っています」(岸田さん)

「飯山フード Iiyama Food サバ缶プロジェクト」のサイトでは、料理家が監修したサバ缶レシピも公開している

「飯山フード Iiyama Food サバ缶プロジェクト」のサイトでは、料理家が監修したサバ缶レシピも公開している

また、プロジェクトの第3弾として、飯山市独自のサバ缶の開発を目指しているとの展望も。

「飯山市には味噌を作っている有名な会社があるので、その会社と一緒にサバの味噌煮缶を作ったり、漬物会社に協力していただいて野沢菜と合わせても面白いのではないかと思います。飯山は菜の花が有名ですから、菜の花からとれた油でサバのオイル漬けを作ってもいいかもしれません。

石巻市で水揚げされたサバと、飯山市の特産品を本当の意味でひとつにする商品を開発したいんです」(岸田さん)

「サバ缶」を、飯山市の広告塔としてもっと大きく育てたい。それによって「飯山市をもっと賑わせていきたい」という想いが岸田さんたちにはあります。

「飯山市内の飲食店でサバ缶料理が食べられるところをもっと増やしたいですね。飯山に『サバ缶料理』を食べに来ていただき、さらに滞在してもらえることを目標に、プロジェクトを盛り上げていきたいと思っています」

海岸の夕陽

取材:木村衣里
文:都田ミツ子
撮影:小林直博

飯山フード Iiyama Food サバ缶プロジェクトの商品はこちら

SABASKI 金華サバ水煮
石巻漁港に水揚げされた金華サバを、鮮魚のまま冷凍せず加工しています。金華サバとは、宮城県石巻市の太平洋上に浮かぶ「金華山」の沖合いで獲れる真サバのみが認定されるもの。金華山沖の海は寒流と暖流のぶつかる潮目があり、世界でも有数のおいしい魚が取れる漁場として知られています。調味料も国内のものを厳選し、塩は讃岐産。素材の味を大切に、旬のおいしさが詰まった水煮缶です。

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