2019.12.12
400年の伝統と歴史
「高岡銅器」の新たな着色技法
~未来への伝統~
「高岡銅器」の新たな着色技法
~未来への伝統~

紀元前7000~8000年頃に発見され、人類が最初に使い始めた金属「銅」。
一見なじみがなさそうですが、実は、10円玉などの硬貨、家電製品からフライパンや鍋などの日用品まで、意外に私たちの暮らしのさまざまなところで活躍しています。
「耐久性」・「殺菌性」など実用性バツグンですが、一番の魅力はなんといってもその美しさ。経年変化で酸化し、赤から緑に変わった青緑色の美しさは、格別です。
今回は、「〜未来への伝統〜」と題し、富山県高岡市の伝統工芸品「高岡銅器」を通して、次の世代につなげていきたい日本独自の「ものづくり」や、世界に誇る「和の心」をお届けします。
国内トップシェア「鋳物(いもの)のまち」高岡

鋳物の繁栄は、1611年、加賀藩主の前田利長公が高岡へ入城。城下町繁栄における産業政策の一環として、現在の高岡市金谷町に7人の鋳物師(いもじ)を招いたことに始まります。
日用品や農具、仏具など、たくさんの銅鋳物が作られ、栄え、400年ほどたった今でも国内トップの鋳物シェアを誇る高岡。日本全国のお寺の鐘や仏像、銅像の95%は、高岡で作られているというから驚きです。
銅を腐食させ鮮やかな「色彩」を引き出す高岡の伝統技術

高岡銅器の着色法では、銅の持つ美しい色を最大限に引き出すため、漆やお歯黒など、古くから伝わる素材や薬品、炎をコントロールし、金属の表面を腐食させ、人為的に美しい皮膜を作り出しています。
その仕上がりは美しく風合いがあり、まさに経年変化を遂げた数百年前の芸術品。銅の腐食作用によって引き出された色は、塗装では再現することのできない金属ならではの温かみがあります。
実はこの高岡銅器の中で、エッ?と驚くような技法に挑戦している工房があります。今回は、そちらをご紹介しましょう。
大根や酢を使用? 常識にとらわれない新たな着色技法

Oriiで着色に使用する材料は、糠(ぬか)みそ、大根おろし、日本酒、酢など。調理に使うような材料を使い、塗ったり、焼いたり、煮たり、漬け込んだりと、そのふるまいはまるで料理人のよう。
糠みそを塗り高温で焼くことで斑紋模様を作り、酢と鉄粉を混ぜたお歯黒を稲穂で磨くことで茶褐色の皮膜を作り、大根おろしと一緒に煮ることでよりきれいな発色を表現します。
Oriiの現場から生まれる世界に1つだけの銅製品

そんな状況を打破すべく、折井氏は、新しい銅製品の需要を生みだしたいとの思いで、何度も試行錯誤を加え、「オリイブルー」と命名された色と、1mmに満たない薄さの金属にも着色できる技法を生み出しました。これらの開発により、日用品やインテリアまで、新たな需要が生まれています。
Oriiオリジナルの発色は、着色職人が「焼く・煮る・塗る」の工程を何度も繰り返し、奥深く美しい色を引き出していきます。全てが熟練の職人による手作業で、色目や筋目、雲のようなまだら模様は、ふたつと同じものはありません。「オリイブルー」は、青の発色がとても美しく、使えば使うほどに愛着が湧いてきます。
Oriiの製品は、「伝統は革新の連続である」という言葉があるように、技術を守るだけでなく、新たな視点を加えながら、日々伝統を紡いでいるのです。
どこにもないOriiオリジナルの発色。次はどんな新色が出るのか楽しみです。