2019.06.07
2048年、私たちの食卓から魚が消える!? 伝えていきたい海の恵み

私たちの食卓に欠かせない魚。「2048年には海から食用魚がいなくなる」というショッキングな説が、2006年に発表されたアメリカの科学雑誌「Science」に掲載された論文により発表されました。
今、世界の海ではどのような問題が起こっているのでしょうか?温暖化による海水温の上昇や、海洋汚染、そして海に流れ込むプラスチックなどのゴミが世界的に問題となっています。特に、経済の成長やライフスタイルの変化とともに、数多くのプラスチック製品が生産・消費されるようになりました。生活のあらゆる場面で利用されている便利なものですが、その大半は「使い捨て」され、きちんと処理されず捨てられることで、河川などから最終的に「海」に行きつきます。
世界の海には、合計で1億5,000万トンも存在しているといわれるプラスチックごみ。年間800万トンと、なんと重さにしてジャンボジェット機5万機分が、毎年新たに流入しているとも言われています。多くのプラスチック製品を生産、消費している日本も、決して無関係ではない問題です。
プラスチック問題だけではない、漁業の問題

プラスチックゴミに加えて問題となっているのが、漁業における「乱獲」です。必要以上の量の水産物を獲ってしまうと、資源は枯渇してしまい、自然が元来持っている再生力も奪ってしまいます。人類の勝手な都合で、水産物を「獲りすぎる」乱獲は、海の生態系を壊す大きな問題です。
これらの世界的な問題に加えて、日本では急速な「魚離れ」が続いています。2000年代初めまで世界一の魚食国だった日本ですが、急速な魚離れが起きたことで、魚が売れず漁業の縮小に繋がるといった問題が発生しています。また、漁業で働く人々の高齢化や、後継者不足から、数十年先の漁業維持も危ぶまれてます。
家庭の食卓にも密接している海の問題。未来の子どもたちが、おいしい魚を食べ続けられるように、私たちができることは何でしょうか?
海の未来のために

プラスチックゴミの問題を解決するためには、「リデュース(Reduce)・リユース(Reuse)・リサイクル(Recycle)」の「3R」を始めることで、海に流れるプラスチックの量を減らすことができるいといわれています。特に日本では、「無駄なレジ袋を断るようにする」、「過剰包装を断る」ことで、プラスチックの生産をリデュース(=減らす)ことが、プラスチックごみの減少につながるのです。
乱獲については、消費者として、海の環境に配慮し、持続可能な漁業で獲られた MSC 「海のエコラベル」付きの製品を買うことで、持続可能な漁業をサポートできます。
魚離れについては、「旬の魚」を食育の教材として、四季それぞれの気象や寒暖に応じた「おいしいもの」について学ぶことが第一歩となります。豊かな味覚を形成すると同時に、四季折々の魅力や自然に寄り添った暮らしの素晴らしさを体感することで、魚への興味を促し、日本の「魚食文化」を継承していくのが狙いです。旬の魚を食べることは、おいしくて健康的なだけでなく、輸送や冷凍保存などに使われるエネルギーの削減にもつながります。
日本で育まれた魚食文化

海に囲まれた島国日本では、魚を食べることを中心として、独自の「魚食文化」が発達してきました。
魚介類を干すことで、保存性を高め、うまみを凝縮させた「干物」。魚介類の身を、その内臓と一緒に塩漬けにして発酵させた「塩辛」。鮮度が落ちやすい魚を、産地以外でも食べられるように、酢でしめた「酢締め」。生魚を塩で漬け込み発酵させてできる、旨味成分の凝縮された液体の「魚醤(ぎょしょう)」。大漁にとれた魚を少しでも長く食べるための保存利用として誕生した「かまぼこ」などの練り製品。
ただ単に魚を食べるだけではなく、魚を獲る技術や処理の仕方、鮮度を保ち続けるための加工や保存の方法、素材を生かすための調理方法など、「魚食文化」には、魚食を中心として受け継がれてきた知識や知恵、伝統の全てが含まれています。
日本から世界へ! 江戸で生まれたファストフード

現代のファストフードといえば、ハンバーガーや牛丼などを思い浮かべますが、江戸時代にもファストフードが存在していたのをご存じですか?
今では、世界に誇る日本の食文化の代名詞でもある「寿司」。江戸で生まれた「寿司」は、「そば」や「天ぷら」と並んだファストフードとして、屋台で手軽に注文し食べられることから、江戸っ子の気質に合う「粋な食べ物」として、人気を集めていました。今や世界中に広まり、世界的な共通語ともなった ”Sushi”は、日本が世界に誇る魚食のひとつとしてたくさんの人々に食べられています。
海の恩恵をみんなで祝う「世界海洋デー」

日本は世界でも有数の豊かな漁場に恵まれた国として、昔から魚などの水産品の鮮度を保ったまま保存し、食べる知恵を生み出すことで、「海の恵み」による恩恵を余すことなく利用してきました。
毎年6月8日は国連によって制定された「世界海洋デー」です。この日は、「海の恩恵をみんなで祝う日」として、海の環境保護や海の安全を守る活動を中心としたさまざまなイベントが世界約100カ国で行われています。
2013年12月にユネスコの世界無形文化遺産に登録された「和食」においても重要な食材である水産物。みんなでワイワイ楽しく食べる手巻き寿司の具や、日本の朝食に欠かせない焼き魚、味が染みた魚の煮付けなど、私たちの食卓に水産物は欠かせません。
「世界海洋デー」をきっかけとして、日本だけでなく、世界中の人々が、いつまでも魚を食べ続けていける環境を守るために、何が出来るか考えてみませんか?
未来につないでいきたい海の恵み

いかがでしたか?
四方を海に囲まれて、世界でも有数の「魚食文化」をもつ日本。「世界海洋デー」をきっかけにして、日本の魚食文化の素晴らしさを見つめ直してみませんか?魚食文化と海の環境、そして漁業を守っていくことで、豊かな「海の恵み」を次世代の子供たちへ引き継いでいきましょう!