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エルマの読みもの

江戸前が最高!
そう言える、数少ない魚「穴子」の謎

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<center>江戸前が最高!<br>そう言える、数少ない魚「穴子」の謎</center>の写真

豊洲市場「住民」の井上です。


2004年以来、市場の新参者として過ごさせてもらっています。
世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、私が日々どのように過ごしているかをお伝えしていきたいと思います。


魚の文化は鮮度の文化とも言え、流通が発達してなかった頃においしいと言われていた魚と、今現在、高い評価となっている魚は変わってきています。


遠方にある食材は、鮮度劣化(つまり腐る)の問題で、いかに天下の江戸・東京においても食べる事ができない。あるいは、食べても味が悪い。昔の人が生きた世界は今よりも格段に狭く、大阪や九州などは異国に感じたのだろうななんて思います。


「魚は江戸前に限る」と言われていた時代から時がたち、浜から豊洲(昔は日本橋や築地)まで半日~1日で届くようになってくると、東京の鮨(すし)屋は江戸前だけでなく、日本全国の魚の価値を見いだしていき、幅広い食材を扱うようになっていきました。


江戸前の海は埋め立てられ、ビルが立ち並び、魚があふれていたかつての姿はありません。また、鮨屋に北海道や九州の魚も並びますと、「江戸前」の価値はグッと下がります。しかし、それでも「江戸前が一番」と言われている魚があります。それが「穴子」です。

知っているようで、実は知らない「穴子」

さて、穴子って、知っているようで知らない。

有名店があるのかもすぐには浮かばないのではないでしょうか? ウナギは結構、「どこどこの店がうまい」とか言ってSNSなどで投稿されがちですが、穴子ってそうでもない。似た感じのハモやウツボに至っては皆無に近いと思います。(ハモもウツボもおいしいんです)

穴子料理は案外多くて、天ぷらや煮穴子だけでなく刺身やフライにする地域もあります。ただ、天ぷら屋で出される穴子も、鮨屋で出される穴子も、店により味が違い過ぎる。

おいしい穴子は口の中でほろりと崩れて思わずニンマリとしてしまいます。私などは鮨屋では、ツメで食べて、塩で食べて、煮切りで食べてと穴子を堪能します。しかし、おいしくないのはひどい。臭い。

あのとろける穴子は特別なもので、なんとか家で再現できないものか?

穴子は「活き」だからこそ、価値がある

鮨屋の穴子を作るなら、当然良い穴子が必要になります。私も、かつて何度も近所で売っている穴子でチャレンジしたのですがおいしくできなかった。

その理由は「鮮度」にあるようです。穴子の場合、死んでしまったものに価値はありません。豊洲市場に入る穴子は基本「活き」、つまり生きてにょろにょろ動いているものです。

鮨屋はそれを自分でさばくか、仲卸にその場で割いてもらうかして持ち帰ります。

穴子処理2
(豊洲の仲卸三清の井ノ上さんにさばいてもらいました。目にもとまらぬ速度。)

なぜそこまで「活き」にこだわるかというと、死んだ穴子は「臭い」が出るからです。

穴子に限らず、にょろにょろした魚は表皮にうろこがなく、その代わりにネバネバの粘液が体を覆います。このネバネバは死ぬと臭いを強く発するので、「活き」じゃないとダメなんです。

ちなみに、市場に入る他の魚は、普通は死んだものです。

鮮度を維持するために神経締めをしたり、氷に詰めたりはしますが、「活き」で入る魚は料亭などに行く特別なものしかありません。ですので、「基本は活き」で流通するというのは非常に珍しいのです。

本当に「江戸前の穴子」が最高なのか?

江戸前が穴子の最高評価なのは、正しいのでしょうか?

まず、「活き」で入荷するという事は、市場から近い場所で水揚げされる事が有利になります。特に流通がままならない頃は、死んで強烈な臭いを生んでしまう遠方の穴子の評価は低かったでしょう。

もう1つは餌の違いがあります。穴子は穴の中に住み(だから穴子という)移動距離はそれほど広くなく、住んでいる海域にいる餌を食べます。穴子は悪食でなんでも食べてしまうので、その海域にある餌により味が左右します。

江戸前の穴子と並ぶ産地が2つあって、それがタコで有名な明石沖と対馬の西側です。この3つは漁場の環境は同一ではないですが、プランクトンが豊富で、それを食べる魚や甲殻類がいます。そのうまみのある餌を穴子が食べるので、この3地域の穴子は脂がのり、味が良くなります。

穴子3
(一番下の穴子は首の下がポッコリしている。こういうのがうまい。)

穴子は悪食で産卵後でもすぐに太るので1年中丸々としているのですが、その反面、餌を食べずにいると痩せて味が落ちます。という訳で、明石・対馬西よりも首差で「江戸前が一番」となっているようです。

鮨屋もセリ人も仲卸も、「江戸前がうまい」という評価で、その理由はこんなところみたいです。

他の魚と違って「大きいからおいしい」とは限らない

魚は総じて大きいものの方が、脂がのって美味しいのですが、穴子はそうではありません。

大きさに関わらず脂がのるものはのり、痩せているものは痩せています。(以前、400g位ある大きな穴子を食べたことがあるのですが、パサパサしているし骨はあるしで全然おいしくなかった!)

小さい穴子は骨があたりません。穴子は構造的に骨をとるのが難しく、大きいとどうしても骨が気になります。1匹200g位までは問題ないのですが、300gとか大きいものはある程度身を犠牲にしてでも骨を取った方が良いかも。

「小さい方が良い」と言っておいて何ですが、大きい穴子は肉厚で、これはこれで濃厚で好きです。

穴子って、小さくても大きくても味自体は良いので、「何に使うか」で大きさを選ぶと良いです。鮨なら小さいものが良いですね。

鮮度の他に大事なのは「徹底的にぬめりを取る」こと

活きの江戸前の穴子(あるいは丸々太った穴子)を、鮮度の良い状態で入手したら、それで終わりかというとそうではなく、もう1つ重大なポイントがあります。「ぬめり取り」です。

穴子はこのようにしてぬめりを取っていきます。

① 塩をすると白いぬめり浮き出る
② 浮き上がったぬめりをよく洗う
③ さらに皮にお湯をかけて洗う
④ 最後にスプーン等でぬめりを丁寧にそぎ取る 

穴子を手に入れ、袋に入れて持ち帰って、いざ袋を開けるとそれなりに臭ったりしますが、それは以下の方法でぬめりを取るとなくなるのでご安心ください。仮に身にも臭いがついたものがあったら、それは恐らく死んでから時間がたって内臓から臭いが移ってしまったものです。

ぬめり取りは簡単なのですが、ちょっと勢いというか度胸が必要で、魚のうま味が抜けない様にと中途半端にやっていると臭いが残ります。丁寧に徹底的にぬめりを取ると臭いがまったくしません。それでいて味も濃いのが穴子。ものすごいパワーを感じます。

低温で、ゆっくりコトコト煮れば鮨屋の穴子ができる

煮れば煮るほど柔らかくなるのは豚足とかすね肉とかそういうもので、魚を煮るのってそんなに時間がいりません。

砂糖と醤油(しょうゆ)と酒とで20分程度煮れば完成です。ここで強火は厳禁です。弱火、私は沸騰しないくらいの弱火(とろ火)で落しぶたをして(写真は撮影のためにふたを外しましたが、実際は落しぶたをします)、ゆっくり火を通します。

こんな感じで、穴子鮨、家で作れます!

フワっととろける鮨屋の穴子。100点満点とはいかないですが、鮨屋の穴子の味になっています。かなりおいしく作ることができました。

穴子料理
(色んなパターンを試しました。ツメを塗らないとたくさん食べられる。煮汁はサッパリした方が好き。)

市場には「謎」の世界が結構あります。

穴子って家で食べる人少ないですよね? ということは、漁師も少ない、さらにセリ人も少なければ、仲卸も多くない。買っていくのはプロだけなので、情報は限られた人にしか手に入れられません。なので「おいしい穴子」が何のかはあまり理解されていません。

謎だった世界が解明されてきたばかりです。穴子は夏が旬だと言われていますが、冬のある地域の穴子はさらに脂を蓄え、これがすごく濃厚らしいです。夏が旬なのは本当か? 今度試してみます。やっぱり市場って楽しい。


筆者紹介


豊洲市場在住 食のプロデューサー
井上 真一

豊洲市場在住 食のプロデューサー 井上 真一

2004年にスタートした豊洲市場ドットコム(旧築地市場ドットコム)。
以来、100年以上続く店舗がひしめくなか、市場の新参者として過ごさせてもらっています。世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、「肉食系」の男女が集まる市場で、「雑食系」の私がどう過ごしているかをお伝えしたいと思います。

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どこにでもあるものより、なかなかないもの。
太陽の香りがしたり、人の手の温度を感じる。
大事に生まれたものは、大事にしたくなるものです。
そうだ。こだわりは、ごちそうなんだと思う。
もっと知ってほしいもの、あなたに届けたいもの、見つけました。
好きって、エールなのかもしれません。