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エルマの読みもの

地域や時期でこんなに違う!
多面体な「桃」の魅力

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豊洲市場「住民」の井上です。


2004年以来、市場の新参者として過ごさせてもらっています。
世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、私が日々どのように過ごしているかをお伝えしていきたいと思います。


男女って、一緒に社会生活を送っているから同じような考えでいるんだろうとずっと思っていたけれど、結構、違う考え方や価値観を持っているんだなと知ったのはわりと最近です。


同じように桃の好みなんてみんな同じだろうと思っていたのに、思いのほか日本各地で違っているようです。信じられないのですが、「固い桃」が好きな人が北の方には結構います。


私は関東の出身なので、桃と言えば皮が手で剥けるようなジューシーで甘いのが基本的には好きで、静岡出身の妻も同じような好みです。長年桃を食べ続けてきた結論として、一番好きな品種は白鳳だなと(今のところ)思っています。


桃の季節を振り返ってみて、改めて「おいしさ」の感じ方にはさまざまなことが関係しているのだと再認識しました。

違いはあるけどつながっている? 無数に広がる桃の家系図

桃は、古くから 「病気や災いを払う」特別な果物として扱われ、 延喜式や古事記などの歴史的な書物には必ずと言って良いほど記述がある、食歴の長い果物です。お隣、中国においても仙人の食事であったとか孫悟空が食べたとかさまざまな伝説が残っていて、甘くおいしい果実を超えて神秘さをまとっています。

取扱量でと言うとみかんとりんごが2大果実として君臨していますが、桃はそれよりももっと熱量を感じる、語りたくなり、極めたくなる果物のように感じます。桃を食べたいという欲望は深く強く、それがたくさんの品種を生み、伝説をつくっていったのだと思います。

桃の産地と言えば、岡山・山梨・福島が有名です。この3地域で作り方も品種もちょっとずつ違って、同じ桃でありながら味が結構違います。

岡山1

岡山は完全に袋掛けして育てるので果皮は白く、とても滑らかで果汁にあふれた上品な甘さのものが多いです。

山梨1

山梨は岡山同様に袋掛けするのですが、収穫前に袋を開けることで真っ赤に色づき糖度も上がります。

福島1

福島は袋掛けせずに育てる事が多く、平均糖度が高いのと、緻密で凝縮された果肉が特徴です。

育て方にあった品種が開発されたのか、品種にあった育て方になったのかはわかりませんが、各地域を代表する品種もあり、その品種×育て方の掛け算で味が変わるのです。

僕が好きな甘くて柔らかい桃はいつ手に入るのか

「桃の季節はいつからいつまで?」と聞かれると一瞬困りませんか? 夏なのは分かりますが、始まりと終わりがわからない。

豊洲市場では、まず温室栽培の桃が母の日需要を見込んで入荷します。温室育ちの桃は小さく、甘さはそれなり、そして高価。まぁ温室モノはそういうものですね。母の日が過ぎても温室桃が中心で、6月の後半頃から露地(ろじ)の桃が入荷します。

この時期にでるのは山梨、品種は「日川白鳳」です。(和歌山・長野でも桃はたくさん作られますが、主に関西に向けて出荷されるので、豊洲にはあんまり来ないんです)日川白鳳は早く収穫されるので嬉しいのですが、甘さはまだのっていません。優しい甘さです。

ここから「●●白鳳」という白鳳の交雑種が続き、7月中盤になると前半の桃の王者「白鳳(本白鳳)」が登場します。前半の桃は皮が手でピューっと気持ちよく剥けて、果肉が柔らかで果汁があふれます。柔らかくて果汁にあふれる桃は7月の山梨の桃を狙うと良いです。

白鳳は岡山でも作られますが、前述のとおり栽培方法の違いにより山梨の白鳳とは異なった味になります。白鳳を掛け合わせた品種の多さや、日本全国で作られている事から見ても、白鳳が人気なのがわかります。

あかつき1

8月になると福島の桃が最盛期になります。福島の桃を代表するのは何と言っても「あかつき」です。後半の桃の王者です。あかつきは白鳳と白桃の掛け合わせで作られた品種ですが、この「白桃」が入った品種は最初が固くて、時間がたつと柔らかなるという特徴があります。

白鳳の柔らかさとは違う凝縮された緻密な柔らかさで、白鳳よりも甘さが濃厚になります。私はあかつきも好きです。桃に限らず、甘さは旬の後半の果実の方がのります。これは覚えておいてください。

白桃が入った品種は、完熟しても皮がつつつーーとは剥けない事もあります。よく「食べごろになると皮が手で剥ける」というコメントがありますが、あれは半分間違っていて、実際は品種によって異なります。

パリパリ・サクサク? カチカチの桃の登場

子どもの夏休みが終わり桃への関心が収まってくる9月になると、「緻密」から「固い」品種に移り変わってきます。白根白桃、おどろき、西王母(せいおうぼ)などです。産地も福島から山形へとさらに北上します。

この辺りの品種は待てど暮らせど柔らかくなりません。時間がたってもゴムっぽくなるだけなので、固いうちにパリパリ・サクサクとして食感を楽しむのが良いです。北の人はこの食感が好きみたいですね。この間、山梨の産地の方もそう言っていて(収獲したてはどんな桃もパリパリ)、農家さんはパリパリが好きなのかな?

そして固い桃と時期が重なる8月後半から9月に、「黄金桃・黄桃」と呼ばれる、果皮・果肉共に黄色い桃が登場します。黄色い桃は糖度がとても高く、かつ白い桃には少ない酸味もあるので「マンゴーのよう」と表現されます。確かにマンゴーっぽい。

この黄色い桃は袋掛けして陽を当てない事で黄色くなります。黄色い桃は鮮やかな黄色が魅力で、この袋をしないと赤が混じった黄色になってしまうため商品価値は落ちるのですが、赤味の混じった黄桃はとんでもなく甘くて香りもよく信じられないほど美味です。

これはぜひ一度食べていただきたい。

赤黄色1

そして、最後の最後、10月になると日本でもわずかな生産者しか作っていないCX(シーエックス)という桃が登場します。この桃は大変に高糖度で20度を超えるものも出ます。固い桃がお好きな方はこの時期まで待ってもらって、ぜひ一度お試しいただきたい。

でも、実は固いと甘さを感じにくいんです。「甘い!」という感覚は果汁があふれて初めて感じるのだなと理解できます。同じような糖度でも、食感が固いと甘さは感じにくいので、その点も知っておいていただきたいところです。

桃の固さから考える、まだ見ぬ「おいしさ」の軸

固い桃がおいしい、桃は「皮ごとがぶり」がおいしい、産地に行くと言われますが、ごめんなさい、僕は柔らかくて皮が無いのが好きです。

ただ、固さに限らずですが、果物には「地域固有のおいしい感」があります。例えば、りんごの場合、本当かどうかは定かではありませんが、九州では流通が不便だった時代のなごりで「柔らかいりんご」がおいしいとされたそうです。青森の人が聞くと驚きます。

みかんも、食べ比べると明らかに小粒の方が糖度は高いのですが、大粒の方がおいしいという意見も関東では多いです。

あるいは、葡萄(ぶどう)は種アリの中粒が濃厚で糖度が高く、フランスのワインの品種はみんなそうなのですが、日本で全国的に人気なのは種なしの大粒です。

それに加えて、市場って江戸っ子おじさんが圧倒的に多いので、酸味があるもの、パリッとしたもの、サッパリしたものを好む傾向があるので、それと一般的な消費者の好みが違う事が結構あって、「あれ、これもっと人気出ると思ったのにな」なんて事もあります。

食べ比べ2

世の中には、検証されてない「おいしさ」があふれています。産地や品種だけでなく、固さ、大きさ、部位なんかも気にして、ぜひ、自分の最高のおいしさを追求していってほしいなって思っています。


筆者紹介


豊洲市場在住 食のプロデューサー
井上 真一

豊洲市場在住 食のプロデューサー 井上 真一

2004年にスタートした豊洲市場ドットコム(旧築地市場ドットコム)。
以来、100年以上続く店舗がひしめくなか、市場の新参者として過ごさせてもらっています。世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、「肉食系」の男女が集まる市場で、「雑食系」の私がどう過ごしているかをお伝えしたいと思います。

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