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プロしか扱わない貝の奥深い魅力

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豊洲市場「住民」の井上です。


2004年以来、市場の新参者として過ごさせてもらっています。
世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、私が日々どのように過ごしているかをお伝えしていきたいと思います。


私のように仕入れを仕事としていましても、旬の時期がいつだったかわからなくなることがあります。
年に1度しか食べないようなフグや鱧なんかは良いとして、カツオなんかは上ったり下ったりして結構長い期間売場にありますし、タイなどは養殖もあるので余計にわからなくなります。ましてや貝の旬なんて、一般の方は考えたこともないのではないでしょうか?


先に答えを言いますと、貝がおいしくなるのは1月以降、3~4月の春に産卵するまでが最もおいしくなります。私、市場で仕事をするようになって、貝のおいしさに目覚め買って帰る事がめちゃくちゃ増えました。逆にいうと、スーパーにはほとんど貝がおいてないので、このおいしさに気がついてなかったのだなと感じました。今日はプロが使う貝のおいしさについて、独断と偏見でこれは食べた方が良いというのをお伝えしようと思います。


■北海道長万部(おしゃまんべ)の北寄貝は栗のような甘さ

貝の中で私がもっとも好きなのは北寄貝です。
北海道など北の方でしか獲れないので、昔の江戸前寿司で使われることはまずなかった。なので、東京でこのおいしさが知られるようになったのは最近かもしれません。

北寄貝のすし

北寄貝のすし。塩でも醤油でもおいしい。

北寄貝は身(足)だけではなく、ヒモも、貝柱もそれぞれの個性がありつつ全部がおいしく、1粒の満足度がとても高いです。北寄貝はほんの少しだけ火を通すと甘さが増しておいしくなります。日本人は、何でもついつい生で食べたくなってしまいますが、貝は全般に火を通した方がおいしく、北寄貝も沸騰させない塩水に少しだけくぐらせると甘さが増してうまいです。

その中でもひときわおいしいのが長万部産の北寄貝です。長万部産の北寄貝は大きくて肉厚ですが、柔らかで貝の味を超越した栗のような甘さを持っています。見た目も黒っぽくて他の茶色と黒と白が混じったようなものとは違い、なんというか迫力があります。

左が長万部産、右が北海道

左が長万部産、右が北海道のどこかのもの

北寄貝はさばくのも簡単(貝の口が堅くないし、丸いのでケガしない)なので、もうぜひぜひチャレンジして欲しいです。そうそう、貝をおいしく味わうのも魚同様、できる限り「剥きたて」を食べるのが大事なポイントです。

■何とも言えぬ素晴らしい香りの宮城県閖上(ゆりあげ)の赤貝

赤貝は日本最古の歴史書「古事記」にも記述があり、日本中で収獲される日本人になじみの深い貝類です。

江戸前鮨でも評価が高い寿司ネタですが、私は他の貝と比べると特にそれほどおいしいとは思わずにいました。ところが、その評価が一気に変わったのはこの閖上の赤貝を食べてから。他の貝とは異質、サッパリした澄んだ味を好む江戸っ子の好みをわしづかみにする味わいです。

閖上の赤貝の魅力は何と言ってもその香りとシャクシャクとした歯切れの良い食感です。旬は冬なのですが夏に食べたくなるようなすっきりした味わいで、飲み込んだ後も口の中に香りの余韻が残ります。

閖上の赤貝

閖上の赤貝。すしで食べるのが一番だと思う。

以前、タイ料理のシェフと市場を回った時にこの閖上の赤貝をいたく気に入って、タイ料理のメニューに使ってくれたのですが、タイ料理のスパイシーな味わいの中でもこの赤貝の香りは健在でした。すごい!

■バランスが絶妙な長崎県小長井(こながい)の牡蠣

牡蠣は、日本全国、北海道から九州までくまなく養殖されていて、その各地域の味の違いが楽しめる貝類です。生で食べる殻付き牡蠣と、火を通して食べる剥き牡蠣とでは評価される産地が変わります。私は断然殻付きの生牡蠣が好きで、一冬で200個を超える量を食べたこともあります。

散々食べて思いましたが、牡蠣は何を食べてもおいしい。しいて言うなら、北海道に行ったら北海道のものを、広島に行ったら広島のものをたっぷり食べるのが正しく良い楽しみ方、おいしく食べるコツで、その地域で「いやこの牡蠣よりもどこそこがうまい」と言うのは無粋です。

牡蠣3種

左から、岩手県広田湾、長崎県小長井、兵庫県室津。同じ牡蠣でもこれだけ違う

それを踏まえて私の好みと思って聞いてください。
牡蠣は貝の内側の白いクリーミーな部分と、外側のヒダのあるシャキシャキとした部分とのバランスで味わいが変わります。そのバランスがとても良いのが長崎県小長井の牡蠣です。濃厚なのにサッパリしています。

小長井の牡蠣

貝に厚みがある小長井の牡蠣

牡蠣らしい味がしっかりしてクリーミーなのですがしつこくなく何個でも食べられます。大きさは小ぶりに見えつつも貝の厚みがあり白い部分がぽてっとしていて見た目以上に食べ応えがあります。また、このサイズだとちょうど一口で口の中に全部が入り、口いっぱいになって気持ち悪くなる事もありません。そこが大事です。

大きい牡蠣も見た目はゴージャスで濃厚さもあってそれはそれでおいしい。しかし、この一口サイズで「何個でも食べられる味」が牡蠣には必要だと思っています。旧ローマ帝国のカエサルが牡蠣好きで一度に100個食べるとかなんとかいう逸話が知られています。この話が代表するように、1つを大事に食べるよりかは、たくさん食べて食べるほどに元気になっていくような感覚も牡蠣を食べる場には必要だと(勝手に)思っています。

■火を通すなら岩手の米崎の牡蠣

宮城との県境、岩手の陸前高田市にある広田湾は岩手有数の牡蠣の産地です。この地域の職人さんというのでしょうか?牡蠣剥きをする人の腕はすさまじく、牡蠣の貝柱を外すときにその付近にある心臓を傷つけずに剥く事ができるそうです。その中でも岩手の米崎地域のものは秀逸です。

岩手県米崎の剥き牡蠣

とても大きい、岩手県米崎の剥き牡蠣

米崎の牡蠣は大きく(岩手の牡蠣は全体的に大きい)、一口で食べられない大きさです。生だと食べにくさはあるものの鍋やフライには最適。今日は生牡蠣にするかカキフライにするかはいつも悩みます(両方食べる時もある)。剥き牡蠣のよくないものは水っぽく火を入れると縮みます。米崎の牡蠣はそれがないので濃厚でうまいのです。

■市場にきて初めて知った夏の貝「イシカゲ貝」

そしてこの貝です。小売店では見たことがあまりない、飲食店に直行してしまう美味な貝「イシカゲ貝」です。先の米崎がある広田湾で養殖されていて、他の産地はたぶん無いと思います。

イシカゲ貝

夏が旬のイシカゲ貝

見た目はトリ貝に近くて、味も似ています。貝の身にあたる足がすこぶる元気で、油断すると逃げ出します。

イシカゲ貝は足が元気

イシカゲ貝は足が元気、ここがうまい。

この部分が北寄貝ととり貝を合わせた食感と甘さですこぶるうまいです。イシカゲ貝も生よりは北寄貝同様に低温の湯を潜らせてから氷水で締めて刺身で食べると良いです。もし見かけたらぜひチャレンジしてください。

今回取り上げた貝は、ほとんどがプロ用です。
でもでもといつも思うのですが、ちゃんとした情報と共に店頭に並べられていたら、少なくとも私のようなお酒と食べる事が好きな人間は手に取ると思うのですよね。その情報って味だけではなく「どこを楽しむのが良いか」という視点もあります。

牡蠣を食べる時はその地域に思いを馳せる。夏になったらイシカゲ貝を楽しみにする、北海道に旅行したつもりで北寄貝を食べる、江戸っ子になった気分で粋に赤貝の香りを楽しむ。みたいに。

鮪も良いですが、たまには貝を楽しんでくださいませ。

筆者紹介


豊洲市場在住 食のプロデューサー
井上 真一

豊洲市場在住 食のプロデューサー 井上 真一

2004年にスタートした豊洲市場ドットコム(旧築地市場ドットコム)。
以来、100年以上続く店舗がひしめくなか、市場の新参者として過ごさせてもらっています。世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、「肉食系」の男女が集まる市場で、「雑食系」の私がどう過ごしているかをお伝えしたいと思います。

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どこにでもあるものより、なかなかないもの。
太陽の香りがしたり、人の手の温度を感じる。
大事に生まれたものは、大事にしたくなるものです。
そうだ。こだわりは、ごちそうなんだと思う。
もっと知ってほしいもの、あなたに届けたいもの、見つけました。
好きって、エールなのかもしれません。