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エルマの読みもの

本能を呼び覚ます?
究極の天然モノ
「マツタケ」の魅力とは

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<center>本能を呼び覚ます?<br>究極の天然モノ<br>「マツタケ」の魅力とは</center>の写真

豊洲市場「住民」の井上です。


2004年以来、市場の新参者として過ごさせてもらっています。世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、私が日々どのように過ごしているかをお伝えしていきたいと思います。

養殖モノが良いのか、天然モノが良いのか? 市場では日常的な話題です。


以前の記事でもお伝えしましたが、本マグロはすでに養殖が天然を上回り(マグロ全体はまだまだ天然中心ですが)、マダイやブリ類、ホタテ、カキ、ウナギなどは先んじて養殖が中心となっています。


水産物の養殖の歴史は案外古く、最も歴史ある養殖モノは「ノリ」で、江戸時代には技術が確立していました。カツオといいマグロの赤身といい、昔の江戸っ子はサッパリしたものが好きですね。


しかし、それよりも圧倒的な歴史を誇り、養殖(栽培)が主となっているのが「農作物」です。というよりも天然物ってあったっけ? という状態ですよね。天然の米、天然のみかん。うーん、食べてみたい気もしますが、きっとおいしくないでしょうね。


人間に刻まれた「狩猟」の本能が、自然の食べ物を欲する



もともと、自然にあった肉や魚や木の実を食べて暮らしていた古代人が、米の栽培を始めたのは6,000年前とされています。


「狩猟」を中心に住処を移動し生活していた古代の日本人は、常に飢えの恐怖にさらされていましたが、米の栽培が始まったことにより「定住」することができ、人口も増えていきました。


一ヵ所に人々が集まることで現代にも通じる階層や階級が形成され、自分の領地が生まれ、それが「国」という概念に発展していったのだとか。


いずれにしても、「食物を栽培し自らの手で生産量を増やせるようになった」ことで、人類は繁栄していったのだと言えます。


人間が本能的に「狩猟」を好むのは、古代に必要だった能力が遺伝的に残っているからだと言われています。魚を釣ったり、山菜を見つけたりすることが得意な人間が生き残ってきた形跡が、現代人にもみられるのです。


われわれが、自然にある食べ物に季節の移り変わりを感じ、秋になるとサンマを、春になるとタケノコを食べたくなるのは、遠い記憶に共鳴しているのでしょう。


自然のものを食べるというのは、とても動物的な行動であり、なんというか「生きている」という気持ちになります。季節ごとに出会い、また過ぎ去っていくはかなさもまた好きです。


その自然にある食べ物の最高峰(自分比)となる農作物が、「マツタケ」だと思います。キングオブ天然モノ。天然キノコはおいしいだけでなく、酔いしれることができる魅惑(みわく)の味です。



すべてはマツタケの魅力に「酔いしれたい」人のために



マツタケ人気は凄まじく、豊洲市場の仲卸店頭をのぞくと最高で1箱(400g位)20万円なんていう日もあります。


マツタケは、すべてを仲買人達が価格を(高く)競り合う「セリ」で売買される数少ない品目で、見た目や産地、状態などにより1箱1箱価格が異なります。


1箱数十万円になるかもしれないその「セリ」に参加する仲卸や買参人は、鬼気迫るものあります。


マツタケの卸先は、ほぼ間違いなく料亭や割烹(かっぽう)です。


その店の先にいるマツタケに酔いしれたい客のために、仲卸は気合いを入れて仕入れるのです。これはなかなかカッコイイです。



築地時代のマツタケセリの様子)

一口にマツタケと言っても、実は地域と季節により微妙に異なります。


マツタケは本来、「アカマツ」の樹の根元に生えてくるものを言いますが、北海道のハイマツ・アカエゾマツ・トドマツ、東北のコメツガ・ツガにも生えます。夏が旬の早松(サマツ)はウバメガシという広葉樹に生えます。


慣れると、マツタケを見れば共生している木の違いがわかるそうですが、私には一生できない気がしています。いや、本当にできる人いるの?


マツタケの産地は、北海道、岩手、宮崎、長野、兵庫(丹波)、山口などです。豊洲市場で最も多い産地は岩手と長野。この2県が大多数を占めます。


マツタケは基本的には日本中の山に生えるものなのですが、今はアカマツが生活に利用されることが少なくなり、木を枯らすマツクイムシが増え、マツタケの数も少なくなったそうです。


その代わりに世界中からマツタケが集まっています。



色も香りもさまざま! 世界から豊洲へ集まるマツタケ


(カナダ産)


外国産のマツタケは面白いです。
日本のマツタケにそっくりなもの、いやこれは本当にマツタケと言っていいの? というようなものまで、さまざまです。


外国産で中心となるのは中国。中国産は、日本産と見た目は同じですが、マツ科ではなくブナ科でちょっと香りが違います。


アメリカやカナダ産のものは巨大なマッシュルームのような容姿で、香りもだいぶ異なりもっと強い力強い香り。


以前食べたアメリカのものは香りのする何かを振りかけたのかと思うほどでした。アメリカのものは何でも「濃い」と感じるのは私だけでしょうか?


(中国産)


モロッコ・トルコからも入っていて、こちらはブラウンマッシュルームのような形。


特筆すべきは北朝鮮や韓国のもので、かなり日本産のものに近く美味(最近見ませんが)。また最近入荷するようになったブータン産もかなり高品質です。


(ブータン産)


マツタケを珍重する国はほとんどないらしく、世界中から日本をめがけてやってきます。
世界のマツタケの味が楽しめるなんて、少し前は考えられませんでした。市場の面白さはこんなところにあります。



すごいのはマツタケだけではない! 魅惑の茸「香茸(こうたけ)」


(香茸)


市場に入る天然のキノコはひととおり食べてみましたが、その中でマツタケと並ぶうまさを誇るのが「香茸(こうたけ)」です。


香茸はその名の通り妖しい香りを放ちます。


この香りは乾燥させることで引き出され、手に入れたものは数日網の上で乾かしてから、しっとりした状態のものを食べるか、あるいはカリカリまで乾燥させてから水で戻して食べるかします。


生を食べると少し苦みがあり、これはこれでおいしいのですが、乾燥させるとこの苦みが消え、うまみだけが残ります。


また、香茸には若干の覚醒作用があるとかないとかで、たくさん食べるとハイになるそうです(あくまで体験者談ですが)。天然モノにはそういう力があるのかもしれませんね。



天然のキノコの魅力は、香りとうま味と妖しさ



天然キノコの魅力を引き出す料理が、食材のエキスを余すことなく吸い込むリゾットだと思います。


オリーブオイルに刻んだニンニクをたっぷり、そこに乾燥した香茸をいれ、香茸が柔らかくなったらそこに刻んだマツタケを入れます。これは完全に開いたものや虫食いのもので十分です(市場では運が良いともらえます(笑))。


そこにミルクを入れ、残ったご飯(生米から作るのが本来のレシピですが、そこは手抜き)を入れて少しだけ煮込みます。最後に熟成されたハード系のチーズをタップリ入れて完成です。


このリゾットは、天然モノの「力強い味」を楽しめます。一口食べてみると食べ物がパワーを与えてくれるのがわかります。


食べ物の本来の役割は、活動するためのエネルギーを得ることです。


そう思うと、狩猟は「エネルギーを得るために、エネルギーを使う」というやや非効率な活動になっています。それなら植物の方がずっと効率的とも思うのですが、どうなんでしょう?


まぁ、難しい話はさておき、天然の食べ物には「パワー」が確かにあり、それを体で感じ取れる瞬間があります。


おいしさとはつくづく「本能的」なものなんだなと、世界から集まるマツタケを食べながら感じています。


筆者紹介


豊洲市場在住 食のプロデューサー
井上 真一

豊洲市場在住 食のプロデューサー 井上 真一

2004年にスタートした豊洲市場ドットコム(旧築地市場ドットコム)。
以来、100年以上続く店舗がひしめくなか、市場の新参者として過ごさせてもらっています。世界中から人と食品が集まる市場の面白さと、「肉食系」の男女が集まる市場で、「雑食系」の私がどう過ごしているかをお伝えしたいと思います。



どこにでもあるものより、なかなかないもの。
太陽の香りがしたり、人の手の温度を感じる。
大事に生まれたものは、大事にしたくなるものです。
そうだ。こだわりは、ごちそうなんだと思う。
もっと知ってほしいもの、あなたに届けたいもの、見つけました。
好きって、エールなのかもしれません。