2021.02.19
知っているようで知らない「無添加」。
体や環境に優しい商品を買おう
「わかる、えらぶ、エシカル」特集(15)

「エシカル消費」という言葉を知っていますか? エシカル消費とは、人や社会、環境に配慮した消費のことで、誰にでもできる社会貢献のアクションとして、注目されています。
本特集では前回(全9回)の特集の続編として、約6カ月にわたりエシカル消費のおすすめ12テーマを解説していきます。第15回は、「無添加」について詳しく解説します!
「添加物」が持つさまざまな役割とは

「無添加」の前に、「添加物」について考えてみましょう。
添加物とは、一般的には食品添加物を指します。食品衛生法では、「『食品添加物』とは食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するもの」と定義されています(*1)。
例えば、食品添加物には、製造工程をスムーズにする、独特の食感(例えば、ゼリーのような食感)を生み出す、色や味、香りをつける、日持ちを長くするなどさまざまな役割があります。化粧品に使われる添加物も同じように保存性を高めたり、色や香りをつけたり、泡立ちをよくしたりといった目的のために使われています。
添加物があることで、私たちはさまざまなものを、より安く、早く、多く手に入れられるようになりました。もはや添加物なしでは私たちの生活は成り立たないと言っても過言ではないほど私たちの暮らしは添加物の恩恵を受けています。
何が「無添加」なのかは製品によって異なる

無添加みそ、無添加洗剤、無添加ワイン……。最近「無添加」と表示された商品をよく見かけるようになりました。安全や健康面のことを考え、選んでいる方も多いのではないでしょうか。
「無添加」は、何らかの成分が使用されていないことを意味します。
食品の場合は、厚生労働省が認める保存料、甘味料、着色料、香料などの食品添加物が使われていない製品。洗剤の場合は、合成界面活性剤、蛍光材、香料、着色料などを使っていない製品。そして化粧品の場合は防腐剤、香料、合成色素、鉱物由来の成分、石油系界面活性剤を使用していない製品などに「無添加」という表示が使われています。
このように、製品によって使う添加物が異なるため、一概に「無添加」といってもそれぞれが意味するところは違います。
また、全く添加物を使わずにつくることは難しいことが多いため、多くは、特定の成分を指定して、たとえば「保存料無添加」「香料無添加」などと表示してあります。中には「無添加」しか書いていないものもありますが、加工段階で使用する調味料に含まれる添加物なども含めて一切使用していないことは難しく、また、香料は入っていなくても保存料は入っている、といった場合もあるので注意が必要です。
では、無添加を選ぶことはどのようにエシカルなのでしょうか。
無添加を選ぶことはなぜエシカル?
(1)健康を守ることにつながる
添加物は私たちの生活に欠かせないものですが、その中には健康問題が生じる可能性が指摘されているものもあります。もちろん、現在使用されているものは国や国際機関の基準を守って使用されているため、食べたり肌に触れたりしてすぐに害が出るというものではありません。ただ、多様な添加物を長期間摂取した結果、私たちの体に何が起こるのかを明らかにすることは難しく、個人差もあるため実際のところはわからないことが多いのも事実です。
(2)動物への配慮(アニマルウェルフェア)
添加物の安全性を確かめるために、多くの場合は動物実験が行われています(*2)。短期間に多く食べさせたり、長期間にわたって食べさせたりすることによって、健康への影響を確かめています。私たちが添加物の入ったものを避ければ、こうした動物への負担も減らすことができます。
つまり、無添加商品を選んでいくことは健康、そして動物配慮にもつながるという点でエシカルなのです。全く摂取しないということは難しいですが、なるべく控えつつ、自分なりに添加物との付き合い方を考えていくことが大切です。
続いて、国内外の無添加商品や取り組みをご紹介します。
国内外の無添加商品や取り組み

英国では人工添加物を使っていない「リアルブレッド」を広めようというキャンペーンが毎年行われています。自分でパンをつくってみるワークショップなども開催され、パンの本当のおいしさや工場でつくられるパンが健康や環境に与える影響を楽しみながら考えるきっかけをつくっています。

イギリスのサッカークラブ「フォレストグリーン・ローヴァーズFC」は2019年に学校給食用の食品会社を設立しました。普段食べるものが健康やパフォーマンスへどう影響するかを考えることが目的で、提供する野菜ボールやハンバーガーは100%植物性の素材でつくられ、化学調味料や人工的な原料・保存料などは一切使用していません。
無添加商品を選ぶポイント
パッケージに「無添加」と書かれているかどうかというわかりやすいポイントもありますが、商品やメーカーによってその定義は変わってしまうため、自分で原材料や成分表示を確認し、使われている成分を確かめる必要があります。
また、食品の場合、厚生労働省が食品添加物の指定を行っているのですが、その中にはクチナシや豆腐を固める際に使われるニガリ(物質名:粗製海水塩化マグネシウム)など、昔から使われてきたものも含まれています(*3)。これらの場合には「無添加」とは表示されません。その点でも成分表示をみることが大切です。
また、食品として使われ、添加物に指定されていないものの、発がん性が指摘されているものもあります(*4)。例えばうまみ成分としてよく使われているタンパク加水分解物(*5)もその一つです。ラーメンやおかき、だしの素などに使われていますが、添加物ではないため使用されていてもパッケージには「無添加」と表示されています。
肌が弱い方やアレルギーがある方など添加物を摂取できない人もいます。なかなか一筋縄ではいかない無添加商品選びですが、まず自分がどんな成分を避けたいのかを考え、少しずつ成分の目的や健康への影響を調べながら、原材料や成分表示をよくみて判断していくことが大切です。
次回は「災害対策商品」について解説します。お楽しみに!
■出典(外部サイト)
*1 添加物とは
*2 一般社団法人日本食品添加物協会 安全性の確かめ方
*3 既存添加物一覧
*4 タンパク加水分解物に発ガン性
https://www.ucoop.or.jp/shouhin/qa/et/etqa_5618.html
*5 動物性もしくは植物性のタンパク質(豆など)を塩酸で加水分解したもの。分解する際に生じる化学物質に発がん性があると指摘されている
参考:『食品の裏側』、東洋経済、安部司(書籍)
記事提供
IDEAS FOR GOOD(外部サイト)

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