2020.10.20
【イベントレポート】
これからのエシカル消費とは?
みんなで考える、明日からできること
これからのエシカル消費とは?
みんなで考える、明日からできること

いま、新型コロナウィルスの影響で、人々の価値観や生活は大きく変化しています。
テイクアウトやデリバリーによる家庭ごみの増加や、商品に直接触れて作り手の想いを知る機会の減少など、サステナブルな暮らしを実践する上で立ちはだかる新たな課題にモヤモヤを抱えている人も少なくないのではないでしょうか。
そうしたエシカル消費にまつわる課題やモヤモヤを感じている方のために、人・社会、地域、環境にやさしいエシカル商品を応援するお買い物メディアエールマーケット(Yahoo! JAPAN運営)とIDEAS FOR GOODは、エシカル消費をテーマとするオンラインイベントの第二弾を2020年7月10日に開催しました。
第二回目となる今回は、エシカル消費の実践者やエシカルブランドのプロデューサーをゲストにお招きし、エシカル消費をコロナ後の新たな生活様式(ニューノーマル)に位置づけるべく、わたしたち消費者一人一人が明日から実践できる具体的な方法やヒント、エシカル消費を実践するうえでの大切な視点について参加者の皆さんと一緒に考えました。
モデレーターは、ヤフー株式会社・エールマーケットサービスマネージャーの小玉弘子と、IDEAS FOR GOOD編集長の加藤佑さんが務めています。
本記事では、イベントの中から特に印象的だった部分をご紹介します。
(※記事の内容は、イベントを実施した2020年7月10日時点の情報です。)
登壇者プロフィール

(エシカルペイフォワード プロデューサー)
開成、東大から一転、中退して社会的ひきこもりを経験。セゾン・日立グループにて新規事業、起業、人事、人材コンサルタントを経て、人事メディアにて人事コミュニティ運営に従事。現在はNPO法人GEWEL理事、「サーキュラーHR」編集長等として活動中。エシカル商品のセレクトショップ「エシカルペイフォワード」プロデューサーとして講演等を行う他、「エシカル男子の会」、フィリピン少数民族と作るブランド「EDAYA」などでエシカルの裾野を広げている。

(IDEAS FOR GOODライター/アメリカ・ニューヨーク在住)
ロンドン経由東京育ち、2013年よりニューヨークのブルックリン在住。パーソンズ美術大学大学院でファッション・マーケティングを専攻後、ラグジュアリー・ファッションの世界で働く。「好きなものは好き」と「循環の中に生きる」を両立するライフスタイルを追求。ニューヨーク及びアメリカのサステナビリティ、サーキュラー・エコノミー、アニマルライツに関するリサーチ・執筆も行う。ヴィーガン。

(ウェブデザイナー/オーガニック食 料理家)
デザイナーでありつつ、有機野菜、オーガニック食材を使う料理家。有機農家さんを訪ね、各地のおいしい有機食材を探しています。オーガニック食材専門店 Be Organic Marketの店主(現在ネット販売)。デザインセンスを料理の色や盛りつけにも生かしている。Cleval Inc. 代表取締役。
登壇者たちがエシカルに取り組み始めたきっかけは?
稲葉さん:僕がエシカルに関わり始めたのは、エシカルファッションブランドの第一陣が出てきた2012年末頃のことです。私は今も本業でヒューマンリソースの仕事をしているのですが、「働くこと」ってフェアトレードされてない部分が多いということをずっと考えていたときに、ラオスのフェアトレードコーヒーを販売している学生団体さんと出会いました。
「ラオスのコーヒーをどう広めたらいいか?」と、相談されたときに、「フェアトレード」という言葉に初めて真剣に向き合ったんです。そのときに「もしかすると、これは人と社会との関わり方や、個人がどう生きていくのかという考え方を大きく変えるきっかけになる、そして今後はこうしたものが社会に必要とされていく」と感じたんです。
COOKIEHEADさん:大きなきっかけになったのは、身の回りのモノの動物実験でした。アメリカに引っ越してきて日本にいたときよりも、認証マークや英語での情報などを通して化粧品や洗剤などの日用品で動物実験がされていることを目にしたり考えたりする機会が増えたんです。選択肢も情報も多い環境で、最終的にどちらを選ぶかという判断は、消費者の責任だと思うようになりました。
そしてそういった意識は、動物実験に限らず、サステナビリティや人権への配慮など、幅広い分野に広がっていきました。例えば、もともと私はオーガニックを美容意識や健康志向の高い人が選ぶものだと思っていたのですが、知れば知るほどそれは地球にとっても、そこで働く方々の健康にも重要なことであると知り、自分の生活を考えるようになったのです。
横山さん:私は幼い頃から自然に囲まれて育ってきました。そうした経験に加え、アメリカに行ったときにオーガニックのモノがあたりまえのように買えることを知り、日本のスーパーとの差に違和感を覚えたのがきっかけでした。
私はエシカルの中でもオーガニックから入り、今まで続けていますが、商品を選ぶのは私たちの誰しもに与えられている権利だと思っています。その自由な権利を、未来のために、より地球環境や人に優しいモノに対してお金を支払いたいという想いがあり、そうした「貢献できる消費」を増やしたいと考えるようになりました。
「自分は何を一番大切にしたいか?」を追求してみる

稲葉さん:私たちの身の周りには、いろいろなつながりがあふれていますよね。たとえば、みなさんの携帯電話やパソコンも、もしかしたら生産に関わっている子どもたちがムチを打たれて苦しんでいる可能性がありますし、作る過程で環境にも悪影響を与えているかもしれません。
また、私たちが着ている服がコットンでできていれば、土があって種が植えられて芽が出て収穫するという過程もあります。もちろん、服というのは一朝一夕ではできないので、服を作る過程でいろいろな歴史があり、使い終わればそれがまた未来につながっていきます。都会に出て一人暮らしをしていたとしても、実際はものすごくたくさんのつながりに囲まれて生きているんです。
エシカルって環境に良いものや伝統を生かすものなどたくさんの視点があり、すべてを網羅することは難しいですよね。そうした中で「じゃあ私は何を一番大切にしたいか」というモノを見つけて追求し、周りの人にも伝えていく。たとえば僕のエシカルとみなさんのエシカルは、大きく違うと思うんです。それでも、お互い「みんないいね」と楽しみながら、これからの未来を選び、作っていく。それが僕にとってのエシカルだと思っています。
“もったいない精神”の裏側にある「リスペクト」

COOKIEHEADさん:ゼロウェイストを考えたときにReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)などを表す3Rや、最近だと再生型のリジェネレーションのR、コンポスト(Rot)を表すRなど、Rを巡ってさまざまな意見があります。それに対し、少し前のイギリスBBC放送の記事の中で、日本に古くから伝わる“もったいない精神”の裏側にある「リスペクト」のRはどうか? ということが述べられていたんです。
素材が作られてその素材を誰かが買い取り、それを加工して包装し、輸送されて自分の手元にくる。それをこれからの未来まで循環する形に織り込んでいくためには、自分たちで終わりにするのではなく、そこからの未来を考えなくてはいけません。ひとつのモノを通して過去、未来へのリスペクトを持つことこそが、本当に終わりがないRを作れるのだと、この記事から感じました。
まずは周りの人と共感できる要素を探ってみる

横山さん:周りの人たちにどうしたらエシカルの大切さを理解してもらえるのかは、誰もが悩むところですよね。私の場合、たとえばお野菜だったら「こんな味がするんだよ、おいしいでしょ」と、豊かさや良さ、感覚的なところ、ストーリーを先に伝えて「実はこれオーガニックなんだよ」と、後から結果論を伝えています。そうすることで、押し付けがましくなく、興味を持ってもらえるんです。人によっても共感できる要素は違うので、まずは周りの人と共感できる要素を探ってみる。
イベントでは、参加者の方からも絶えず質問が上がりました。
「いま、ファッションブランドなどでもリサイクル素材の製品が増えています。今後、リサイクル素材が社会に受け入れられてトレンドのようなものになったとき、『リサイクルをすればいい』という本質的ではないことが根付いてしまうモヤモヤがあります。リサイクルをトレンドではなくエシカルの一つとして受け入れてもらうには、どう発信していけばよいのでしょうか?」
COOKIEHEADさん:リサイクルは、今あるものを活用する意味では非常に前向きな取り組みだとは思います。ただ、リサイクルは基本的にペットボトルを再びペットボトルとしては使わずに他のモノになるといった、元の状態より劣化した品質のモノになる「ダウンサイクル」であることが現状多いと思うんですね。
実際にペットボトルがリサイクルされて上着になったとして、その「次」がないですよね。使用後に誰かに譲って着てもらうことはできますが、その先に何か他のものになる可能性が非常に低い。そう考えると、ペットボトルのリサイクルを永遠にしたほうが実は、同じ素材のライフサイクルが長いですよね。そうした「どっちのほうが長く生きるか」を考えたときに、リサイクルは一つの案ではあるけれども究極的な解決案ではないんです。
「これからのエシカル」につながる提言と予測
稲葉さん:これからコロナを乗り越えて、「未来をつくる3提言と7予測」なるものを考えています。まず、3提言というのが「エシカル“消費”はやめよう」「エシカルは“安い”と言おう」「エシカルは“売れていく”と言おう」という3つのことです。

まず一つ目に、エシカル「消費」とみなさん言いますが、そもそもモノは費やして消えないので「消費」と言う言葉自体が不思議なんです。消費という言葉を使うことを、そもそもやめてみませんか。買うことは「購買」と言いましょう。
二つ目に、よく言われる「エシカルは高い」ということ。それは、比べるものが間違っています。たとえば、ラーメンで言うと、カップラーメンの価格とお店で食べる一杯1000円のラーメンを比べて高いと言ったら、それは比較対象がおかしいですよね。モノの質とかけられた時間、そしてつながりを考えたら、エシカル商品はむしろ「安くなっている」という逆転現象が起こるはずなんです。
最後に、社会は変わっていくので、これからどんどんエシカルは求められていく。これがみんなで伝えていきたい3つの提言です。その上で、これからのエシカルファッションや商品の7つの予測をお話しさせてください。
「作るときにすでに使い終わってからのことが盛り込まれているもの」「作りすぎず、作り続けられるもの」「使いながら未来に良いもの」「使っているだけで自分を再発見できるもの」「作り手のストーリーだけでなく、使い手へのメッセージもあるもの」最後は「ハレのエシカル」「ケのエシカル」です。毎日ずっと続けられるエシカルが大切で、そういった商品が増えてくれることを望みます。

お三方がエシカルに対して持つ考え方が、第二部のワークショップのヒントとなりました。
私たちが明日からできることは?
「紙ストローは環境によいが使いにくい」という意見に対して稲葉さんからは「使いにくさを受け入れる必要がない。今はシリコンなどいろいろなストローが登場している。建設的な改善をしていけるタイミングと思って楽しめばいいのです。」といったアドバイスがありました。
また、あるグループからは「おばあちゃんの知恵が使える。新しいモノは必要ではなく、意外に日本の昔の生活にヒントがある。伝統や人とのつながりを大切にすることがエシカルになる。」といった考え方も出たことで、参加者一人一人が自分の中のモヤモヤを発散し、新たな視点を得る時間となりました。
最後に、ワークショップまで参加してくださった方々が最後に宣言してくださった、「明日から起こすアクション」の一部をご紹介します。
・自分自身が健康でエシカルを楽しむ!
・今あるものを大切に、長く使う! リスペクトを大切にする!
・自分に関しても社会のことも学び、考えながら価値観をアップデートしたい。
・できることを少しずつ。丁寧に生活することを意識する。
・いろいろな人と知識を共有して、自分でも発信する。
・種を植える、野菜の皮まで使う、量り売りの店を探すなど、楽しくできることを少しずつ取り入れていきたいと思います。
・「自分にとって良いもの」という視点から、「社会にとって・未来にとって良いもの」という視点でもの選びをしていきます!
・コンポストチャレンジ! あるものを消費で終わらない方法を考え続ける!
関連情報
これからのエシカル消費とは?みんなで考えよう、明日からできること (外部サイト)
【第1回のイベントレポートはこちら】
コロナショックで影響を受けた生産者のために、私たちができること
記事提供
IDEAS FOR GOOD(外部サイト)

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