防災はめんどくさいと思われがちですが、実はとても面白いんですよ! 今日は楽しんでもらえればと思っています。
国際災害レスキューナース辻直美さんの監修のもと、ライフラインが止まった生活を半日間体験。困り事を体験しながら、本当に役立つアイテムを検証した結果をご紹介します!
災害が発生すると、電気・ガス・水道などのライフラインが長期間止まってしまうことがあります。知識としては知っていても、実際に体験したことがないと、ライフラインが止まった生活をイメージすることは難しいもの。そのため、充分な対策ができている人は多くないのではないでしょうか?
そこで今回は、エールマーケット編集部が、実際に電気・水道・ガスがすべて止まった生活を、国際災害レスキューナース辻直美さんの監修のもと、半日間体験。どんなことに困るのかを体験しながら、本当に役立つアイテムを検証しました。




よろしくお願いします!
国際災害レスキューナース
辻 直美(つじ なおみ)

著書『どんなに泣いている子でも 3秒で泣き止み3分で寝る まぁるい抱っこ』(講談社)、『レスキューナースが教える プチプラ防災』(扶桑社)、『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(扶桑社)、『防災クエスト』(著者:辻直美/絵:エイイチ/小学館)が好評発売中。
料理ができない

ライフラインが止まっている状況下では、いつものように料理することができません。ガスコンロ、IHクッキングヒーターはもちろん、炊飯器や電子レンジも使えません。また、洗う水も充分にないので、できるだけ鍋や食器類を汚さずに食事を用意する必要があります。

災害時は、炊き出しも出るんでしょうか?

炊き出しはあくまでボランティアなので、コロナ禍では難しく、最近の災害では炊き出しが出ないこともあります。
温かいものを食べるには自分で用意するしかないんですよ。
今回使った商品
そこで今回は、アイラップとカセットコンロを使用して、パッククッキングに挑戦しました。食材は米、小松菜、大根、玉ねぎ、じゃがいも、人参、こんにゃく、豆腐、豚肉、牛肉、それに調味料です。


被災時に冷蔵庫に入っているものを使います。冷蔵庫は停電後24時間開けずに置いておき、その後、溶けてきたものを使います。
パッククッキングに挑戦!
辻さんに教えてもらいながら、パッククッキングでご飯、豚汁、肉豆腐、小松菜のお浸しを作ります。
パッククッキングの流れ
- ① アルミ製の大鍋に水を入れ、カセットコンロに乗せて火にかける
- ② 食材を切り、アイラップに入れる
- ③ 調味料や水を入れて混ぜる
- ④ アイラップの口を結ぶ(輪っかを作るようにして結ぶと、あとで開けやすい)
- ⑤ 鍋のお湯が沸いたらアイラップごと食材を入れ、少し火を強くする
(小松菜は出来上がる3分前に投入する) - ⑥ 再びお湯が沸いてきたら中火にし、30分待つ
- 注意点
- ① なるべくアルミ製の鍋を使用する。厚手の鍋しかない場合は時間がかかるので、その分多めにボンベを備蓄する
- ② 必ず、熱に強い高密度ポリエチレン袋を使用する(同じアイラップでも、業務用のものはNG/ジップロックの袋もNG)
- ③ アイラップが鍋肌に当たらないように、耐熱皿かアルミホイルを敷く
- ④ 強火にするとボンベがすぐになくなってしまうので、中火程度で時間をかけて沸騰させる
※アイラップの選び方や使用方法については、アイラップ公式Twitterアカウント(外部リンク)が注意喚起を行っています。
お湯が沸くのを待ちながら、食材の準備をします。まずはお米です。

お米は必ず30分浸水してください。炊飯時のアイラップの口の結び方は2種類あります。1つ目は普通に空気を抜いて結ぶ方法、2つ目はアイラップの中に割りばしを1本立て、割りばしに巻き付けるようにして結ぶ方法です。前者だと、真空になるのでもちもちした感じの仕上がりに。後者だと、割りばしのところから空気が抜けるので、炊飯器で炊いたような、粒の残った炊き上がりになります。

水の量を多めにすれば離乳食や介護食用のおかゆも同時に作れますよ。
続いて豚汁と肉豆腐の準備をしていきます。食材を切る際にも、洗い物やゴミを増やさない工夫があります。

まな板を使う際は、野菜の袋の中で切るようにすれば、まな板を汚さずに済みます。包丁は洗うか、アルコールで拭いてから使います。生ごみは新聞紙やチラシなどで袋を作ればそのまま捨てられます。ジャガイモの皮は洗いものに使うので取っておきます。シンクを磨くととってもきれいになるから、普段からぜひ使って。ちなみに、パスタのゆで汁も使えます。

ゴミのこともそんなに考えるんですね!

被災後はゴミ収集も止まってしまいますから。

火が通りやすいように、野菜を普段よりも薄く小さく切っておきましょう。

切った食材はアイラップに入れていきます。火が通りにくいものを下に、出汁が出るお肉は一番上に置くことで、具材に味がしっかり染み込みます。

お鍋に対してきっちりと詰めた方が浮いてこないので、1袋に入れすぎず、2袋程度に分けましょう。 豆腐の水は洗うのに使うので、捨てないで。お皿を一枚洗えます。

本当に水分はぎりぎりまで使うんですね。
食材を入れ終わったら味つけです。豚汁には具材の倍よりやや少ない水と、味噌と顆粒出汁を入れ、味噌はしっかり溶かしておきます。肉豆腐には水とすきやきのタレを入れます。できるだけ空気を抜いて、アイラップの口を結びます。
続いて小松菜を準備します。

小松菜は袋に入ったままで洗うと、少量の水で洗うことができます。普通の洗い方だとばらけて、たくさん水を使ってしまうので。

付け根のところはもっと洗いたい気がしますが...

付け根の部分は、最後に袋の下の方だけを開いて洗います。いつもの洗い方とは手順が違うんですよ。

食材の入った袋が完成しました!

鍋のお湯が沸いているので、食材袋を入れていいですか?

ちょっと待って。鍋の底に、耐熱皿かアルミホイルを敷いてください。 アイラップは熱に強いんですが、鍋肌に直接当たると溶けてしまう可能性があるんですよ。アルミホイルは大きく十字にして敷きます。 その上に食材袋を入れていきます。食材を入れると水温が下がるので、いったん火を強くして沸騰したら中火にします。小松菜は残り3分になったら入れましょう。
その上に食材袋を入れていきます。食材を入れると水温が下がるので、いったん火を強くして沸騰したら中火にします。小松菜は残り3分になったら入れましょう。

鍋投入から30分後、4品同時に完成しました!できあがった料理はアイラップごとお皿に乗せました(豚汁は結び目が取れなくなってしまったので、別の鍋に移しています)。

取り分けるお皿にもアイラップかラップをかけ、洗い物を減らすようにしました。鍋に残ったお湯は捨てずにとっておき、のちほど洗い物で使用します。

洗う水のことを考えると、紙皿の方がいいんでしょうか?

私は、普段使っている陶器のお皿にラップやポリ袋をかけて使うことをオススメします。 紙皿は非日常をイメージさせますから、被災後で景色も日常と異なる中で紙皿を使うと、日常生活がなくなったことを嫌でも実感してしまいます。できるだけ生活を日常に近づけることが、災害時には大切なんですよ。
それでは、早速実食です!まずはご飯です。ちゃんと炊けているのでしょうか?


もちもち!甘い!やわらかい!芯が残ったりするのかと思ってたけど、全然そんなことはなくて、しっかり炊けています。

真空にした方はもちもち、割りばしを入れて炊いた方は米粒がちゃんとあるの、わかります?

わかります!びっくりするほど違いますね。

肉豆腐の豆腐に、味がしっかりしみこんでいておいしい!

ライフラインが止まっていても熱々のものが食べられるのが嬉しいね。

いつもと同じ味を食べられると、元気になれますよね。
食事後の片付けも普段とは異なります。水分は一つのお皿にまとめ、ラップが外れたりして汚れてしまったお皿をじゃがいもの皮で拭き、水でゆすぎます。汚れていないお皿はそのまま片付けます。

時短になるし、普段から「料理に時間をかけられないけどおいしいものを食べたい」というときにやりたいと思いました!

ご飯が普通に炊いたのと変わらなくて感動!一度はやっておいた方がいいですね。
トイレを使えない!
今回使った商品
今回は、以下の2つのトイレ処理グッズを試しました。
トイレ処理グッズを体験!
アートトワレは、普段はアートとして飾れるという商品なので、リビングに飾ってみました。額の部分は紙でシンプルな作りですが、インテリアによくなじみます。


額は紙でできているので、万が一地震で落ちてきたとしても安全ですね。

絵は入れ替え可能なので、家族の写真を入れてもよさそうですね。
続いて、中身を確認します。アートトワレには白い大きい袋が2つ、黒い袋が5つ、そして高分子ポリマーの凝固剤が5袋入っています。モンベルの携帯トイレセットには、袋が3枚、凝固剤が3つ、そして脱臭の袋が3つ入っています。


トイレの代わりにバケツを使う方法もありますが、在宅避難の場合は便座を使うのがオススメです。 便座を使うときは、袋が2枚必要です。下に引いた袋はトイレの水で濡れるのでそのままにして、上の袋のみを毎回捨てます。
モンベルのトイレセットには大きい袋がついていないので、便座で使用する場合は、ごみ袋を自分で一枚用意する必要があります。
トイレ処理グッズの使い方
- ① 便座を上げる
- ② 下に引く袋(白)を便座の外側まで広げて引く
- ③ そのうえに引く袋(黒)を同じように便座の外側まで広げて引く
- ④ 便座を下ろす(袋を便座で押さえ、動かない状態に)
- ⑤ 用を足す
- ⑥ 凝固剤をかける
- ⑦ 上に引いた袋(黒)のみ取り出す
今回は実際の尿のかわりに、青い絵の具とアンモニア水を加えた水を用意しました。その水をセットしたトイレ処理グッズに注ぎ、凝固剤を振りかけていきます。


すぐにバーッと固まっていきますよ。

おぉ~!30秒くらいで固まってきました。早いんですね。

ゼリー状になってる!

被災時には大量の処理グッズが必要になるので、市販品のものだけでは足りません。そこで、身の回りにあるものを使ってトイレ処理グッズを自作する方法も辻さんに教えてもらいました。使用するのは、バケツ、市販のペットシーツ1枚、ごみ袋(通常の45lのもの)2枚、新聞紙1枚です。


ペットシーツは100円ショップなどでも売っています。レギュラーサイズで大丈夫。1枚で成人男性の1回分の尿も十分吸収します。
自作のトイレ処理グッズの使い方
- ① バケツにごみ袋を1枚かける
- ② そのうえからもう1枚ごみ袋をかける
- ③ ペットシーツ(レギュラーサイズ)を外表にして畳み、ごみ袋の中に置く
- ④ 用を足す
- ⑤ 新聞紙を細かく切ったものを上に乗せる
- ⑥ 上のごみ袋のみを取り出す
座りたい場合は、本を背表紙を内側にして、バケツの両側に置いてそのうえに座ります。

災害時の新聞紙は非常に役立ちます。「怖い」「腹が立つ」といった気持ちを新聞紙に書き出してもらい、それをたたいたり蹴ったり破いたりして、心のケアをします。そして、破ったものを最後、トイレに使ったり、火をくべたりして使い切ります。消臭効果もあるんですよ。

いざというときに初めてトイレ処理グッズを使おうとしても、使い方がわからないかも。一度はやってみた方がいいですね。仕組みがわかっていれば難しくないですから。
手を洗えない!

断水していると、いつものように手を洗うことができません。しかし、手を洗うことができないと衛生状態も心配です。

被災後は感染も起こりやすい状況ですから、手洗いは重要です。今冬はアルコールの効かないノロウイルスも流行していますから、より気をつけたいですね。
今回使った商品
そこで今回は、ウオータータンクと500mlの空のペットボトルを準備しました。
災害時の手洗いを体験!
ウオータータンクには、体験開始時に水をためておきました。手を洗う際には、ウオータータンクからペットボトルシャワーに水を移して使います。ペットボトルシャワーは、500mlペットボトルのキャップに画びょうなどで穴を一つ開ければ完成です。このようにすれば、水を少しずつ出すことができます。
災害時(断水しているとき)の手の洗い方
- ① ペットボトルシャワーで少しだけ手を濡らしてから、片手にせっけんをつける
- ② 泡立てるのではなく、せっけんを手全体に塗り付けるようにして洗う
(特に、小指の外側から下にかけての部分が汚れがちなので念入りに) - ③ 流すときは、手をボールのようにして水をためながらせっけんを流す

いつものように手をたくさん濡らしてからせっけんを泡立てると、水を大量に使ってしまいます。「泡立つから殺菌できている」というわけではないので、「せっけんを塗布する」ようにしてください。
編集部メンバーもペットボトルシャワーを使って手を洗います。

ほんとだ!意外と少しの水でも洗えるんですね。

普段、水を好き放題使っているということに気づかされました。ペットボトルに入れた少量の水で、4人が手を洗うことができた。水のありがたさをすごく感じました。